育休後の雇い止めで原告敗訴、裁判例から見るマタハラ
2019/12/04   労務法務, 労働法全般

はじめに

 育休取得後に契約社員にされ、その後雇い止めされたのはマタハラに当たるとして東京都内の女性(38)が勤務先に慰謝料などを求めていた訴訟の控訴審で東京高裁は28日、マタハラを否定し原告側の請求を棄却する判決を出していたことがわかりました。今回はマタハラについて裁判例から見ていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、原告側の女性は教育関連会社「ジャパンビジネスラボ」(東京)で語学学校の英語の講師をしていたとされます。2013年3月に出産し2014年9月に復帰したところ、子供を預ける保育所が見つからず当面は週3日の契約社員として勤務していたとのことです。その後保育所が見つかったことから正社員復帰を会社側に希望したが認められず1年後に契約期間満了により雇い止めとなりました。一審東京地裁はマタハラを認め、雇い止めも違法として会社側に110万円の支払いを命じていました。

マタハラとは

 厚生労働省によりますと、マタハラとは「職場」において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した「女性労働者」や育児休業等を申出・取得した「男女労働者」の就業環境が害されることとしています。妊娠や育休等と嫌がらせなどの間に因果関係があるものがマタハラに当たるとされます。逆に業務分担や安全配慮の観点から客観的にみて業務上の必要性に基づく言動によるものは該当しません。

マタハラと法規制

 男女雇用機会均等法9条では、女性労働者が婚姻、妊娠、出産したことを退職理由として予定することや、解雇、不利益取り扱いを禁止しております。また妊娠中や出産後1年以内の解雇は原則無効としています。そして11条の2では事業主は女性労働者が妊娠、出産、休業等をしたことにより就業環境が害されることのないよう相談に応じ、適切に対応するための体制の整備等を講じなければならないとしています。そして育児介護休業法でも労働者が育休などの制度利用に関して同様に必要な体制の整備が求められております(25条)。

マタハラに関する裁判例

(1)業務の軽減をしなかった例
 介護サービス会社の従業員から妊娠を理由に業務の軽減を求められたところ、「妊婦として扱うつもりはない」「万が一何かがあっても働くという覚悟はあるのか」などと言われ業務転換を拒否した事例で裁判所は全体として社会通念上許容される範囲を超えているとし、また措置を講じなかった点についても、職場環境を整え、健康に配慮する義務に違反しているとしました(福岡地裁小倉支部平成28年4月19日)。

(2)妊娠を理由に降格された例
 病院の理学療法士として勤務していた女性が妊娠した際、軽易な業務への転換を行い降格とし、その後復職するも降格されたままとなった事例で最高裁は「妊娠中の軽い業務への転換を契機とする降格措置は、女性が自由意志に基づき承諾しているか、業務上の必要性など特段の事情がある場合以外は、原則として違法で無効」とし降格を適法とした二審判決を破棄し差し戻しました(最高裁平成26年10月23日)。

(3)育休明けに解雇された例
 出版社で働いていた女性が出産後そのまま育休を取得し、その後復帰を申し入れたところ会社からインド転勤か収入が大幅に下がる職務を提示され、断ると「職場の秩序を乱した」として解雇された事例で裁判所は、妊娠出産間もない時期に不合理な理由で解雇した場合、解雇理由に妊娠・出産と明示していなくても育休法や男女雇用機会均等法に違反するとしました(東京地裁平成29年7月3日)。

コメント

 本件で東京高裁は、原告女性は会社側が設定した正社員を含む多様な雇用形態から、十分に検討して自らの意思で契約社員を選んで復帰したと認定し、会社側が正社員として復帰させなかったことは違法ではないとしました。会社側も十分に配慮した上で、女性側が事由意思で合意した結果と判断されたものと考えられます。以上最高裁が示したように妊娠を契機として降格や雇用形態を変更する際は女性従業員側の合意が必要となってきます。また妊娠した従業員への暴言や悪口は原則的に違法と判断される傾向があります。近年マタハラや育休に絡む訴訟は増加傾向にあります。法規制や裁判例などを踏まえて女性従業員が働きやすい環境作りを目指していくことが重要と言えるでしょう。

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