バス会社が乗車拒否で行政処分、運送引受義務とは
2019/10/04 コンプライアンス, 民法・商法
はじめに
近畿運輸局は9月26日、路線バスに乗ろうとした車いすの男性の乗車を拒否したとして滋賀県内のバス会社に行政処分していたことがわかりました。
乗降用スロープの使い方がわからないとして拒否したとのことです。
今回は道路運送法が規定する運送引受義務を見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、今年7月、「帝産湖南交通」(滋賀県草津市)の男性運転手は滋賀県大津市のバス停から乗車しようとした車いすの男性に対し「乗降用スロープの使い方がわからない」として乗車を拒否し、45分後に来る次のバスに乗るよう促したとのことです。
運転手は同社に対し「出発時間を過ぎ、立っている乗客もいた。想定していない状況で、角を立てないよう短絡的に嘘を言った」と説明しているとされます。
これをうけ国土交通省近畿運輸局は同社に対し行政処分を行いました。
道路運送法による規制
道路運送法13条によりますと以下に挙げられる正当理由がある場合を除き運送の引受を拒絶してはならないとしています。
①運送の申込みが認可を受けた約款によらないものであるとき。
②運送に適する設備がないとき。
③運送に関し特別の負担を求められたとき。
④運送が法令または公序良俗に反するものであるとき。
⑤天災その他やむを得ない事由による支障があるとき。
⑥その他国土交通省令で定める事由があるとき。
国土交通省令である旅客自動車運送事業運輸規則13条では以下の場合に運送引受を拒絶できるとしています。
①乗客が法令または公序良俗に反する行為を行い、制止に従わないとき。
②乗客が危険物を携行しているとき。
③泥酔者または不潔な服装をした者等であって他の乗客に迷惑となるとき。
④付添人が伴っていない重病者
⑤インフルエンザ等の感染病に罹患している所見があるとき。
違反した場合
上記の運送引受義務に違反した場合には、国土交通大臣は6ヶ月以内の期間を定めて自動車その他の施設の使用停止、事業の停止または許可の取消をすることができます(40条)。
また罰則として100万円以下の罰金が科される場合もあります(98条6号)。
乗車拒否となる要件
乗車拒否は停車中または客を認めて一旦停車し、運送の申込みを受けてから上記の正当理由なく拒絶することで該当すると言われております。客を認めて一旦停止または徐行した場合には運転者は客からの運送申込みを聞き、正当理由がある場合はその説明をする義務があるとされており、運送申込みを受ける体制に入れば行き先等を聞いた前か後であるかは問わないと言われております。
コメント
本件で路線バスの運転手は車いすの男性に対し乗降用スロープの使い方がわからないなどと言って乗車拒否を行いました。
バスに車いす乗車用の設備が設置されていない場合は道路運送法に規定されている正当理由に当たりますが、本件では該当しないことになります。
近畿運輸局は同社に対しバス2台を15日間使用停止の行政処分を言い渡しました。
以上のように旅客運送事業では原則として乗客の受け入れは義務とされており、法令の規定する正当理由がなければ拒絶できません。
類似例としてタクシー業者が車いすや盲導犬を連れた乗客を拒否し行政処分を受けた例もあります。
旅客運送事業を行っている、または新規に参入を検討している場合には以上の点を踏まえて従業員への周知を行っていくことが重要と言えるでしょう。
関連コンテンツ
新着情報
- 業務効率化
- Legaledge公式資料ダウンロード
- セミナー
- 大橋 乃梨子 弁護士(弁護士法人GVA法律事務所 シニアアソシエイト/東京弁護士会所属)
- 井川 湧理 弁護士(弁護士法人GVA法律事務所/第二東京弁護士会所属)
- 【オンライン】事業譲渡と株式譲渡における法務DDの概要と着目ポイント<基礎編>
- NEW
- 2024/04/09
- 12:00~12:30
- 弁護士
- 淺田 祐実弁護士
- 弁護士法人かなめ
- 〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満4丁目1−15 西天満内藤ビル 602号
- ニュース
- ベッドガードでの乳児死亡事故、警告表示不十分でメーカーに3500万円の賠償命令2024.3.27
- NEW
- ベッドガードの設計の欠陥や警告表示の懈怠により、生後9カ月の乳児が死亡したとして、両親がメーカ...
- 解説動画
- 浅田 一樹弁護士
- 【無料】国際契約における準拠法と紛争解決条項
- 終了
- 視聴時間1時間
- 弁護士
- 梅嵜 啓示弁護士
- 弁護士法人かなめ
- 〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満4丁目1−15 西天満内藤ビル 602号
- 解説動画
- 奥村友宏 氏(LegalOn Technologies 執行役員、法務開発責任者、弁護士)
- 登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
- 潮崎明憲 氏(株式会社パソナ 法務専門キャリアアドバイザー)
- [アーカイブ]”法務キャリア”の明暗を分ける!5年後に向けて必要なスキル・マインド・経験
- 終了
- 視聴時間1時間27分
- まとめ
- 労働者派遣契約 まとめ2024.2.14
- 企業が外部の人間を使って業務を行おうとする場合、業務委託と人材派遣会社からの派遣労働者を使うこ...
- 業務効率化
- LAWGUE公式資料ダウンロード