ブルドックソースが優待利回りを拡充、株主優待制度について
2019/06/21   商事法務, 会社法

はじめに

 ブルドックソースは14日、株式分割を行った上で株主優待制度を一部変更することを発表しました。優待を受けられる範囲が拡張されるとのことです。今回は株主優待制度と会社法上の問題点について見ていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、ブルドックソースはこれまで同社の株式100株~400株保有する株主には自社製品詰合せ1000円相当を、400株以上保有する株主には3000円相当を配布してきました。今回の変更でまず1株を2株に株式分割を行い、優待を受けられる範囲を100株~800株で千円相当、800株以上で3000円相当に拡充されます。これにより優待を受けられる最低投資額が従来の半額となり、利回りが向上するとのことです。

株主優待制度とは

 株主優待制度とは、一定以上の株式を保有する株主に対し自社の事業に関する便益を提供する制度と言われております。自社製品や自社のサービスを受けられるといったものが典型例と言えますが、昨今多種多様な優待制度が現れており映画鑑賞券や野球の観戦チケット、図書カードやクオカード、飲食店の無料チケットといった例もあります。株主優待制度は株主への還元とそれによる個人投資家の投資を誘引する効果が期待できますが会社法上いくつかの問題点も存在し、無制限行うことは望ましくありません。以下具体的に見ていきます。

会社法上の問題点

(1)株主平等原則
 会社法109条1項では、株主をその有する株式の内容と数に応じて平等に取り扱わなければならないとしています。一定数の株式を保有する株主にだけ会社の便益を提供すると、提供を受けられない株主にとっては不平等ではないかという問題が生じます。この点に関する判例は現時点では存在せず、学説上はいくつかの説に分かれますが一般的には優待の程度が軽微であれば実質的に平等原則には反しないと言われております。

(2)利益供与の禁止
 会社法120条では、会社は株主の権利の行使に関して何人に対しても財産上の利益の供与はしてはならないとされております。これは言わば総会屋対策の規定ですが、株主優待制度も場合によってはこの規定に抵触する可能性があります。この点が問題となった事例としては、鉄道会社があいまいな基準で乗車券を株主に提供し、それが社会通念上許容される範囲ではないとして違法であると判断された例があります(高知地裁昭和62年9月30日)。

(3)配当規制
 株主に利益配当を行う場合には原則として株主総会の決議が必要であったり(453条、454条)、また分配可能額の範囲内でなければならない(461条)といった規制があります。株主優待も一種の現物配当であり、これらの規定に抵触するのではないかが問題となりえます。しかし一般的には株主に提供される便益に内容が会社の事業に関するサービスであり、またその額も軽微で平等原則に反しない範囲であれば配当規制にも抵触しないと考えられております。

廃止する場合

 株主優待制度に関しては会社法上とくに規定は存在しません。そのため優待制度を開始する場合も廃止する場合でも業務決定の一環として取締役会で決定することとなります。ただし株主優待制度は個人投資家にとっては銘柄選択の重要な判断要素となっていることから上場会社では廃止する際には十分な期間をもって告知をした上で行う必要があると考えられます。

コメント

 ブルドックソースは株式分割により1株が2株となります。それに伴い優待を受けられる株式の保有数を400株から800株に増加されますが、下限に関しては100株に据え置かれます。そのため優待を受けるための最低投資額が下がり、より多くの株主が優待を受けられるようになります。このように上場会社にとって優待制度は多くの個人投資家にインセンティブを与える重要な判断要素となっておりますが、上記のように一定の制約も存在します。提供するものは自社の事業の範囲内であり、額も軽微といえる範囲である必要があります。株主優待制度を取り入れる場合だけでなく、これまで行ってきた優待制度を廃止する場合でも株主や投資家への影響を考慮して慎重に行っていくことが重要と言えるでしょう。

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