オンキヨーがオーディオ事業売却、事業移転手段の比較
2019/05/24 商事法務, 戦略法務, 事業再生・倒産, 会社法

はじめに
オーディオ機器大手「オンキヨー」は21日、スピーカーやアンプなどのホームAV事業を米サウンド・ユナイテッド社等に売却する旨発表しました。6月26日の定時総会で承認を得た上で7月1日に売却するとのことです。今回は事業譲渡等の事業の売却手段を比較していきます。
事案の概要
オンキヨーの発表などによりますと、同社は音響機器などのホームAV事業を米サウンド・ユナイテッド社に譲渡し、また同社の連結子会社であるオンキヨー&パイオニア、オンキヨー&パイオニアマーケティングジャパンについて、サウンド・ユナイテッド社の持株会社であるバイパー・ホールディングス社に全株式の譲渡をする旨、取締役会で決定したと発表しました。これらの譲渡価格は7500万ドル(約82億円)とされます。定時株主総会での承認および各国の競争当局への届け出等を経て正式に譲渡される見込みとなります。
事業譲渡
事業譲渡とは、一定の営業目的のために組織化され有機的一体として機能する財産である事業の全部または重要な一部を他の会社等に譲渡することをいいます。事業譲渡に必要な手続は、その譲渡する事業の規模、割合によって異なります。事業の全部または総資産額の20%を超える重要な一部を譲渡する際には株主総会の特別決議を要します(会社法467条1項1号、2号、309条2項11号)。総資産額の20%以下である場合は取締役会決議で可能となります。また全部の譲渡の場合には譲り受ける側でも特別決議が必要となります(467条1項3号)。譲渡される債権・債務や従業員、ノウハウ等を個別に移転する必要があります。
吸収分割
吸収分割は1つの会社を2つ以上に分ける組織再編行為の一種です。会社の事業を他の会社に移転するという点においては事業譲渡と同じですが、権利・義務を包括的に移転させる点に違いがあります。こちらも原則的に株主総会の特別決議が必要となります(783条、795条1項、309条2項12号)。なお分割会社が承継会社の株式の90%以上を保有している特別支配会社の場合は承継会社での承認決議は不要となります(略式分割784条1項、796条1項)。また分割する事業の価値、またはその対価が総資産の20%以下の場合も不要となります(簡易分割784条2項、796条2項本文)。
株式譲渡
株式譲渡はその会社が保有する子会社等の株式を他社に譲渡することをいいます。保有株式の全部を譲渡する場合だけでなく一部を譲渡して株主として存続することも可能です。事業譲渡や吸収分割と違い会社そのものの移転と言えます。また基本的に株主総会による承認決議なども不要です。
コメント
本件でオンキヨーはホームAV事業と連結子会社を事業譲渡と株式譲渡の手法で米サウンド・ユナイテッド社等に譲渡することになります。事業譲渡に関しては株主総会特別決議を経て成立することとなります。以上のように会社の事業を他社に売却する方法は会社法上複数存在します。債権者異議手続が不要である代わりに個別に債権者等の合意を要する事業譲渡、個別合意が不要である代わりに債権者異議手続等を要し、手続が比較的複雑は会社分割など状況に合わせて手続を選択することができます。その中でもM&A手法としては株式譲渡がもっとも手続が簡易で利用しやすく、全体の7割はこの方法がとられていると言われております。事業の売却を検討する際には、それぞれのメリット・デメリット、必要な手続などを念頭に適切なスキームを選択していくことが重要と言えるでしょう。
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