ホシザキ定時総会で株主から批判、決算報告書とは
2019/04/04 総会対応, 会社法
はじめに
ホシザキは3月27日の定時株主総会で子会社の不適切取引により決算報告ができなかったことがわかりました。株主からはコンプライアンスを問う声が相次いだとのことです。今回は定時総会で提出する必要がある決算報告書等について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、業務用厨房機器大手のホシザキ(愛知県豊明市)は昨年関連子会社であるホシザキ東海で発覚した不適切取引の影響により有価証券報告書の作成が遅延し、定時総会で決算報告ができない異例の事態となったとされます。ホシザキ東海では昨年内部通報によって工事の架空発注等の不適切取引が行われていたことが発覚し社内調査委員会が設置されております。今後第三者委員会の調査を経て決算を確定し7月までに臨時総会を開催して決算報告を行う予定となっております。
決算報告書とは
決算報告書とは1事業年度ごとの決算結果をまとめた書類のことを言い、会社法や金商法、法人税法などによって作成・提出が義務付けられております。会社法で定められている、いわゆる計算書類の種類としては①貸借対照表、②損益計算書、③株主資本等変動計算書、④個別注記表が挙げられ、それらに加えて事業報告書と附属明細書の作成が必要です(会社法435条)。法人税法でもほぼ同様のものが必要とされ、金商法では上場企業など一定の企業はより詳細な有価証券報告書の提出が義務付けられております(金商法24条1項)。
決算報告書等の承認手続き
取締役会設置会社では上記決算報告書等は取締役会の承認を、監査役、会計監査人設置会社ではそれらの監査を受けた上で定時株主総会に提出され株主総会による承認決議を受けることとなります(436条、438条)。なお会計監査人設置会社の場合、会計監査人による監査報告にいわゆる無限定適正意見が付されている場合は株主総会での承認決議は不要となり報告だけで足りることとなります(439条)。これら計算書類等は定時総会の2週間(取締役会非設置会社では1週間)前から5年間本店に備え置き、株主や債権者の閲覧に供することとなります(442条)。また備え置きとは関係なく書類自体は10年間保存する必要があります(435条4項)。そして定時総会終結後貸借対照表は公告することとなります(440条1項、4項)。
違反した場合
これらの決算報告書等に虚偽の記載をした場合は100万円以下の過料が課される場合があります(976条7号)。また上場企業等の金商法が適用される場合、有価証券報告書等に虚偽記載を行った場合、10年以下の懲役、1000万円以下の罰金またはこれらの併科となり、会社自体にも7億円以下の罰金が科されることがあります(金商法197条、207条)。いわゆる粉飾決算もこの一種と言えます。
コメント
本件でホシザキは東証一部および明証一部に上場する、金商法上の有価証券報告書提出会社となります。通常の決算報告書に加え有価証券報告書の作成と届け出が必要となります。今回は子会社の不祥事により決算書の確定が遅れており定時総会で承認決議ができず、以後臨時総会の招集が必要となっております。このように決算報告書は公開会社、上場会社では扱いがかなり厳格なものとなっており企業には相当な負担となります。一方で零細な中小企業などでは必要な決算公告等が適法に行われていないことが多いと言われております。なお以前取り上げた特例有限会社や持分会社は計算書類等の作成は必要ですが公告は不要です。公開会社や上場会社でない場合でもこれら決算報告書が正しく作成され承認、公告がなされているか今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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