ミュゼプラチナムが株主総会決議で決定、解散・清算について
2025/06/11 事業再生・倒産, 倒産法, 会社法, 破産法, サービス

はじめに
給与未払いなどが問題となっている脱毛サロン大手「ミュゼプラチナム」が、株主総会決議によって解散していたことがわかりました。
今後、解散手続きを進めていくとのことです。
今回は、株式会社の解散と清算について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、美容脱毛サロン「ミュゼプラチナム」を全国におよそ170店舗展開していたMPH(旧ミュゼプラチナム)は、昨年から急激に経営状況が悪化し、同11月から社員への給与の支払いが滞り始め、今年3月までにはほぼ全社員・従業員に対し退職勧奨をする事態に陥っていたとされます。
同社は、国の未払賃金立替払制度の利用を勧めていたものの、同制度は原則として会社が倒産していることが求められ、社員の一部から破産手続開始の申し立てがなされていました。
そのような状況下で、同社は株主総会決議によって会社を解散し、清算手続きを進めていくとのことです。
破産手続では店舗の運営が再開できず、顧客に不利益が生じるからとしています。
会社の解散
会社法471条では株式会社の解散事由が定められており、
(1)定款で定めた存続期間の満了
(2)定款で定めた解散事由の発生
(3)株主総会の決議
(4)合併による消滅
(5)破産手続開始決定
(6)解散を命ずる裁判
などがあった場合に解散となります。
会社は解散してもすぐには法人格を失うのではなく、清算手続きが結了したときに消滅するとされています。
そのため、会社が解散した場合は清算手続きに移行することとなります。
株主総会による場合は、特別決議によって解散となります。
解散を命ずる裁判は、解散命令による場合と、株主による解散の訴えによる場合があります。
前者は公益に反する一定の場合に法務大臣や株主、債権者などが申し立てて裁判所が命じることとなります。
後者は、議決権の10分の1以上の株式を保有する株主が、会社に回復することができない損害が生じるおそれがある場合や、財産管理が著しく失当で会社の存立を危うくする場合に提起できます。
清算手続き
上でも触れたように、会社が解散すると清算手続きに移行します。
清算手続きとしては、会社の現務を結了し、債権を取り立て、債務を弁済し、最後に残余財産を株主に分配します。
もう少し細かく見ていくと、解散したらまず官報で広告の申し込みをし、解散および清算人の登記をして会社財産の調査や財産目録・貸借対照表を作成します。
官報に解散広告がなされ、債権者への催告、株主総会で財産目録の承認、債務の弁済、残余財産の分配、決算承認のための株主総会、清算結了登記、税務署への申告となります。
清算中の会社は清算人が必須の機関となり、清算人会、監査役、監査役会は任意の機関となります。
そして、それまで就任していた取締役や会計参与、会計監査人、支配人など監査役以外の役員などは退任となります。
清算人は、定款または株主総会で定めることも可能ですが、定めなかった場合は解散時の取締役がそのまま法定清算人となります(478条1項)。
特別清算
解散した株式会社に債務超過の疑いがある場合などに、裁判所の監督下で行われる厳格な清算手続きを特別清算と言います。
厳格とは言っても、破産手続よりも簡易で迅速な手続とされています。
具体的な手続きの流れとしては、
- 財産目録・貸借対照表を作成し株主総会で承認
- 官報公告と債権者への催告
- 裁判所への特別清算開始申し立て
- 裁判所による開始命令
- 第一次債権者集会
- 協定案の作成と提出
- 第二次債権者集会で協定採決
- 裁判所による協定認可決定
- 弁済
- 特別清算終結決定
となります。
特別清算では、債権者間で平等な内容の協定を作成し、債権者集会に出席した債権者の議決権の過半数の同意および総議決権の3分の2以上の同意で可決される必要があります。
また、この協定以外にも裁判所の許可を得た上で債権者と和解する場合もあります。
なお、これらの債権者の同意が得られなかった場合は、特別清算から破産手続きに移行することとなります。
コメント
本件でミュゼプラチナムは、すでに同社の社員によって破産手続開始の申し立てがなされていますが、同社は株主総会による解散と通常の清算もしくは特別清算によることを選択したとされています。
同社社長は、破産では顧客へのサービスが継続できなくなるからとしています。
破産の場合は破産管財人が会社の管理処分権を握ることとなりますが、特別清算の場合は株主総会で選任された清算人が行うこととなるため、ある程度会社の意思が反映できると言えます。
以上のように、会社法では会社の解散事由や解散後の清算手続きが詳細に規定されています。
特に特別清算については、裁判所の監督の下、債権者の同意を得る協定の作成が必要であるなど、厳格なものとなっています。
会社が債務超過に陥る可能性が高くなった場合には、どのような手続きがあり、どれを選択するのが良いのかを慎重に検討して準備していくことが重要と言えるでしょう。
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