日産自動車に残業代支払い命令、労基法の管理監督者について
2019/03/29   労務法務, 労働法全般

はじめに

 日産自動車で管理職として働いていた男性(当時42)の妻が未払い残業代の支払いを求めていた訴訟で26日、横浜地裁は約350万円の支払いを命じました。管理監督者には該当しないとのことです。今回は労働基準法の規定の一部が適用除外となる管理監督者について見直します。

事案の概要

 報道などによりますと、日産自動車で課長級の管理職として複数の部署でマーケティングを担当していた男性は2016年3月に脳幹出血で死亡しました。日産自動車では当時男性は管理職に該当するとして残業代等が支払われていなかったとされます。原告である男性の妻は労基法上の管理監督者には該当しないとして未払いの残業代約520万円の支払いを求め横浜地裁に提訴していました。

労基法上の規制

(1)労働時間
 労働基準法では、使用者は労働者に1日8時間、週40時間を超えて労働させてはならないとされ(32条1項、2項)、それを超えて労働をさせるには労使協定を締結して労基署に届け出る必要があります(36協定、36条)。そして時間外労働、休日、深夜労働をさせた場合には割増賃金の支払いが必要となります(37条1項)。

(2)休憩時間
 従業員の労働時間が6時間を超える場合は最低45分、労働時間が8時間を超える場合は最低1時間の休憩を労働時間の途中に与える必要があります(34条1項)。そして休憩時間は原則として一斉に与えなくてはならず、休憩時間中は従業員の自由にさせる必要があります(同2項、3項)。

(3)休日
 使用者は従業員に対して、毎週最低1日、4週間で4日以上の休日を与える必要があります(35条1項、2項)。休日に労働させるためにはやはり労使協定を締結して労基署に届け出る必要があり(36条1項)、割増賃金が必要です(37条1項)。

管理監督者とは

 これら労働基準法の規定は「監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」に対しては適用除外となります(41条2号)。それではこの管理監督者とは具体的にどのような者をいうのでしょうか。厚労省によりますと、管理監督者とは労働条件、労務管理について経営者と一体的な立場にある者を言うとしています。その判断基準としては①職務内容、②責任と権限、③勤務態様、④賃金等の待遇の4つが挙げられております。経営者と一体的で重要な職務を行っており、労働条件等について自らの裁量で決定でき、一般労働者と異なり時を選ばず経営判断が求められ、その地位の重要性から報酬・賞与など一般労働者よりも有利な待遇が与えられている者ということです。

管理監督者に関する裁判例

 管理監督者に該当するかが問題となった事例として、ビュッフェレストランの店長の事例があります。レストランの店長としてコックやウェイター等の従業員を管理し、一部採用にも関与していましたが、労働条件については本部が決定し、労働時間も店舗の営業時間に拘束され、店長の職務以外にコック、ウェイター、レジ、清掃等も行っておりました。大阪地裁は管理監督者該当性を否定しました(大阪地裁昭和61年7月30日)。またベーカリー部門の店長ではあったものの、売上金、アルバイトの採用権限も無く、勤務時間が決められ、タイムカードを打刻しており、賃金も通常の従業員分のみで残業代等は支払われていなかった事例でも否定されております(大阪地裁平成8年9月6日)。

コメント

 本件で横浜地裁は、「男性は経営者と一体的な立場といえる重要な職責と権限をあたえられていない」として管理監督者には当たらないとしました。職務内容が経営に参画するといったものでなく、権限や賃金も他の一般従業員と変わらないことから経営との一体性が否定されたのではないかと考えられます。飲食店の店舗等で「店長」の肩書を与えられ、管理職として残業代等が支払われていないといった事例は以前から社会問題にもなっておりました。しかし一般企業でも「部長」や「課長」といった肩書を与えられ、労基法上の管理職として扱われている場合が多いと言われております。しかし上記のように管理監督者に該当するかどうかは肩書ではなく、権限や待遇等から客観的・総合的に判断されます。自社の部長職や課長職といった役職の従業員に対してどのように取り扱っているのか、今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。

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