派遣会社代表に有罪判決、入管難民法違反について
2018/12/12 労務法務, コンプライアンス

はじめに
不法滞在のベトナム人を働かせていたとして派遣会社代表の男が入管難民法違反に問われていた裁判で11日、札幌地裁は執行猶予付き有罪判決を言い渡しました。人材不足と言われる近年、不法滞在者と知りながら就労させていたという事例は急増しているとされます。今回は入管難民法が規制する不法就労助長罪について見ていきます。
事件の概要
報道などによりますと、東京都の人材派遣会社代表、東郷被告(54)は昨年7月から今年5月にかけて、不法滞在のベトナム人7人を北海道ニセコ町のホテル「ヒルトンニセコビレッジ」に派遣して清掃員として働かせていたとされます。不法滞在していたベトナム人らは実習生として入国しましたが、実習先から逃げ出し、SNSを通じてホテルの仕事を知ったとのことです。同被告は不法滞在と知りつつ働かせていたと容疑を認めており「人手が足りなかった」としています。
入管難民法の規制
入管法では①在留資格をもって在留している者が報酬を得て資格外活動を行なった場合、②不法入国者、不法残留者等が報酬を得て活動した場合には不法就労に該当します。留学生や難民申請中の人が許可を受けずに働く場合や、通訳、外国語の教師として就労が許可されている人が飲食店で働くといった場合が該当します。そして事業者がこういった事情を知りながら外国人を働かせていた場合には不法就労助長罪に該当することになります(73条の2)。以下要件を具体的に見ていきます。
不法就労助長罪の要件
入管法73条の2第1項によりますと、①事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者、②外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者、③業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあっせんした者は不法就労助長として、3年以下の懲役、300万円以下の罰金またはこれらの併科とされております。不法就労者を雇用や派遣した場合が「不法就労活動をさせた者」に当たります。宿舎を提供したりパスポートを管理した場合には「自己の支配下に置いた者」に当たることになります。「あっせんした者」とは仲介やブローカーを指します。
不法就労者と知らなかった場合
雇用している外国人が不法滞在等、不法就労者であると知らなかった場合はどうなるのでしょうか。通常犯罪は故意犯と過失犯に別れます。故意犯の場合は「罪を犯す意思がない行為は、罰しない」とされ故意がないと処罰されません(刑法38条1項)。そして過失の場合にも罰する旨の規定がない場合は過失犯にも当たりません。しかし入管難民法73条の2第2項では外国人が在留資格外であることや就労許可を受けていないといった事実を知らなかったとしても1項の処罰を免れないとしています。ただし過失がなければ処罰しないとしており通常の犯罪とは異なる扱いをしています。つまり過失なく知らなかった場合のみ処罰されないということです。
コメント
本件で被告の派遣会社代表は派遣していたベトナム人らが不法滞在者であること認識した上で、人手が足りなかったとして雇用していたことから不法就労助長に該当することになります。外国人に就労資格があるかどうかは在留カードの資格外活動許可の記載やパスポートの上陸許可印等で確認することができます。これらの確認を怠っていた場合は不法就労助長罪の無過失要件に該当することは困難と言えます。近年の労働者不足で外国人を雇用する企業は増加の一途をたどっております。また入管法も改正され日本で就労する外国人も今後増加することが見込まれます。外国人を雇用する際には在留資格等を厳格に把握・管理していくことが重要と言えるでしょう。
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