休職命令には従わないといけないのか?
2018/12/05   労務法務, 労働法全般

1.はじめに

会社から、傷病だけでなく、メンタルヘルスや精神疾患に罹患したことを理由として休職命令が出される場合があります。そのような従業員は一見して健康に見えるので、休職しなくても労働を継続できると考え、休職命令に従いたくないと感じる事もあると考えられます。このような従業員に対しても、会社は、休業命令を出し、従わせることは出来るのでしょうか。
 

2.休職命令とは

企業は従業員に対して「安全配慮義務」「職場環境配慮義務」を負っています。このような義務に基づき、従業員に安全かつ健康で働いてもらうために、労務管理の一環として出す命令のことを「休職命令」といいます。したがって、これは命令の一環であるから、従業員が一方的に拒否することは出来ないと考えられます。また、この命令は、従業員が労働した功績を鑑みて、解雇の猶予として一定期間休ませ、従業員に従前と同じように働いてもらえるように、労働に適した健康状態に回復してもらうという意味合いのものであるとも考えられます。よって、休職命令を拒否するということは、労働に適した健康な状態で労務を提供するという命令を無視したとして、不当労働と評価され、解雇されるリスクが高まると思われます。

3.会社が休職命令をするリスク

しかしながら、休職期間中は無給となるし、一見して健康である従業員は、休職命令に従いたくない場合があると考えられます。そのような場合、従業員は、①休職の根拠が就業規則等にあるか、②休職の必要性があるか、③原因がメンタルヘルスでないかなどを確認し、不当な命令として裁判を起こし、休職期間中の賃金請求をされるおそれがあります。

4. 法務部員として

休職するということは解雇と同義であると考える従業員も多くいます。そこで、法務部員は、まず、経営者に休職させる前に休職対象者に対して段階的な対応を提案し、その上で、休職対象者との面談に機会を設けるなどして、現状の説明、回復のために有給を使うことの提案などをし、それでも回復しないときには休職命令が下ること、休職の原因が業務に起因するハラスメントなどであった場合に労災申請ができるということを説明すると良いと考えられます。そうすることで、休職対象者も納得の上で休職命令に従うことも考えられるし、企業としても貴重な人材を失わずに済むと思われます。
次に、法務部員は、就業規則に休職についての規定や休職中、休職後の従業員の待遇についての取扱いを確認し、認知を高めるために説明会等を定期的に行う必要があると考えます。この説明会では特に、部下が精神疾患等に罹患したと考えられる場合、該当する部下の普段の様子を自分で確認するだけでなく他の従業員にヒアリングするなどして情報をメモするなど記録して、精神疾患等で「労務が提供できない状態であった」と証明するような資料を集めるように促すことが重要と考えられます。このようにすることで、上記のような裁判になった場合、不当な命令でないという立証に利用できると考えられます。

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