合同会社(LLC)の特徴とメリット
2018/07/23   会社設立, 会社法

1.はじめに

 近年、合同会社の形態を採る企業が増加傾向にある(下記参照)ものの、合同会社は日本ではあまり認知度が少ない会社形態です。そこで、本記事では合同会社の特徴やメリットを踏まえた上で合同会社の活用法を見ていきます。

2.合同会社とは

 そもそも合同会社とはどのような会社形態なのでしょうか。
 合同会社は、持分会社のうち全社員が有限責任である形態のものです(会社法(以下、法令名を省略します。)575条1項、576条4項参照)。平成18年会社法施行時に新たに規定された企業形態です。
 また、合同会社は増加傾向にあります。具体的には、合同会社の形態を採る企業の本店数について平成26年には3万9334件、平成27年には4万8290件(前年比122%)、平成28年には5万5526件(前年比114%)、平成29年には6万3323件(前年比114%)と毎年増加しております(下記参照)。なお、株式会社の形態を採る企業の本店数は、平成29年時点で100万1579件(前年比102%)で、前年比でみると株式会社を合同会社が超えます。

3.合同会社における社員

 社員は定款に別段の定めをした場合を除き、全社員に業務を執行する権限があります(590条1項)。また、定款で定める場合などを除き、業務執行社員は合同会社を代表する権限を有します(599条1項、同条3項参照)。社員の任期は原則無制限です(607条参照)。

4.合同会社のメリット

 では、合同会社の形態を取ることのメリットはどの点にあるのでしょうか。
 メリットは主に
①設立費用が安い
②社員の責任が限定的
③決算書の公告義務がない
④出資者の地位が出資比率に左右されない
などの点にあるとされています。

(1)①設立費用が安い
 株式会社だと、登録免許税が最低15万円、定款認証の手数料が5万円で合計20万円以上かかるところ、合同会社だと登録免許税の6万円となります。合同会社でも定款は作成しますが、公証役場での認証は不要であるためです。
(2)②社員の責任が限定的
 無限責任社員のいる合資会社や合名会社と異なり、合同会社では、全社員が有限責任社員となります(576条4項参照)。出資した額の範囲でのみ責任を負います(580条2項)。
(3)③決算書の公告義務がない
 合同会社も株式会社同様に決算書を作成する義務まではあります(435条1項、440条1項、617条1項)が、これを公告する義務まではありません。そのため、公告に係る費用を削減することができます。
(4)④出資者の地位が出資比率に左右されない
 株式会社では株式数(出資比率)によって利益配分額が決められ、株式数が少ない株主(少数株主)は少ない利益しか得られません。しかし、合同会社における利益配分額は出資している社員同士で決められるので、出資額が少なくても対等な利益を得ることもあります。
 また、株式会社では運営に関する権利も株式数によって左右されることがあります(105条1項3号、297条1項、303条2項、305条1項など)。したがって、少数株主は株式会社の運営に関して意思を反映できないケースがあります。しかし合同会社では、定款に定めがない限りは出資している社員全員が業務を執行して携わることができます。

5.合同会社を活用した企業再編

 企業が合同会社を子会社もしくは親会社として新規設立するケースが増えてきています。株式会社を子会社もしくは親会社として新規設立する場合と比較してどのようなメリットがあるのでしょうか。
(1)合同会社を子会社として新規設立する場合
 企業が子会社を新規に設立する場合、企業の「完全子会社(親会社が100%出資している状態)」として設立されるケースが少なくありません。そして完全子会社化すると、子会社にとって親会社以外に他の出資者が存在しません。
 株式会社では「株式数」によって出資している株主間において権利関係が明白になるメリットがあります。しかしながら、出資者が他にいない完全子会社の場合では権利関係を明白にする必要がありません。したがって、完全子会社を「株式会社」の形態にしておく必要性はなく、設立費用等の面で有利な「合同会社」の形態が推奨されるのです。

(2)合同会社を親会社として新規設立する場合
 企業が合同会社を自分の完全親会社とする場合はどうなるでしょうか。合同会社は、設立された後に既存の企業との間で株式交換手続を行うことで(2条31号、770条)、企業の完全親会社になることができます。
 子会社化される前の企業は、複数の株主が株式を保有し、多数の権利者が存在する状態と言えます。合同会社が完全親会社となることで、子会社となった企業の経営を合同会社が独占することができます。そのため、合同会社は既存企業の幹部が出資するケースがあります。

6.まとめ

 近年では、株式会社以外の形態を採る会社は冒頭で述べたように増加傾向にあります。「株式会社」という枠に捉われず効率的に企業再編をする方法として、合同会社は今後も注目されていく存在であると考えられます。

参考資料
 統計でみる日本

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