公取委が指摘、スマホ「4年縛り」の問題点
2018/06/29 コンプライアンス, 独占禁止法
はじめに
公正取引委員会は28日、携帯電話市場での独禁法上の課題について発表しました。平成28年にも行われた調査のフォローアップとして有識者等へのヒアリングや消費者へのアンケートなども実施したとのことです。今回は公取委が指摘するスマホ市場の問題点を概観していきます。
公取委の指摘する問題点
公取委は自ら無線局を開設して通信サービスを行う事業者であるいわゆる大手スマホ事業者と、自ら無線局を開設せずに通信サービスを行う格安事業者、中古端末販売業者、販売代理店相互のスマホ市場における競争の観点から独禁法上の問題点を指摘しております。まず通信と端末のセット販売が私的独占に、2年間継続して利用しることを条件に通信料金を値引きする2年縛りは私的独占と取引妨害に、携帯端末の代金を4年間の分割払いとし、一定期間経過後に端末を下取りに出し、同一プランに再加入する場合残りを免除する4年縛りも私的独占と取引妨害に、下取りした端末を販売する業者に国内での販売を制限する行為は拘束条件付取引や取引拒絶に当たりうるとしました。
独禁法上の規制の概要
(1)私的独占
私的独占とは、事業者が「いかなる方法」で行うかを問わず、「他の事業者の事業活動を排除し、又は支配することにより」「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」ことを言います(2条5項)。市場における価格等への支配力を形成することとなる点はカルテルなどの不当な取引制限と同様ですが、「相互拘束」などの要件がなく、要件が包括的です。ガイドライン上シェアが50%を超えると優先的に審査対象となるとされます。
(2)取引妨害
取引妨害については先日も取り上げましたが、「競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引」を「不当に妨害」する行為を言います(一般指定14項)。妨害方法は多種多様で、脅迫、威迫、誹謗中傷から他社の顧客を不相当に値引きして奪う行為、他社と取引している取引先への納入遅延などが挙げられております。高額な違約金によって他社に乗り換えることを困難にする点が取引妨害に該当し得るとされます。
(3)取引拒絶
取引拒絶には共同の取引拒絶と単独の取引拒絶に分けられます。共同の取引拒絶とは「正当な理由」がないのに「競争者の共同して」他の事業者に供給を拒絶したり数量を制限することを言います(2条9項1号)。いわゆるボイコットと呼ばれるものです。メーカーが安売りをする量販店にだけ納入しないよう取り決めるなどが典型例です。単独の取引拒絶は「不当に」ある事業者に対して取引を拒絶、数量制限を行うことを言います。共同の取引拒絶には供給の拒絶とそれ以外の拒絶に分けられ、前者は課徴金納付命令の対象となります(20条の2)。
(4)拘束条件付取引
拘束条件付取引とは、再販売価格の拘束、排他条件付取引以外で、「相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて」その相手方と取引をすることを言います(一般指定12項)。メーカーが卸売業者に卸先を指定したり、販売区域を制限したりする場合が典型と言えます。また小売業者に対し、店舗での陳列方法や自社商品専用の販売コーナーを設けさせる場合も挙げられます。
コメント
大手携帯電話会社は一般に4年しばりや2年しばりといった契約方法を採用し顧客の獲得と顧客流出の防止を行っております。公取委によりますと、これらの契約方法は実質的に顧客の契約変更を断念させ、選択権を奪い、また競争者の排除につながるおそれがあると指摘しております。またSIMロック解除手数料は通信料についても算定根拠に合理的説明がつきにくいことなどの問題も指摘されております。一般的に顧客獲得のために各種割引キャンペーンや長期継続契約の場合に特典を付与するといったことは各企業で行われております。しかしその企業のシェア等によっては市場に与える影響の大きさから独禁法上の問題となることも有りえます。NTTドコモやソフトバンク、KDDIといった大手スマホ会社の日本でのシェアは9割を超えると言われており、日本のスマホ市場に与える影響は大きいと言えます。長期契約割引などを展開する際には市場でのシェアや競合他社への影響を考慮し、独禁法に抵触しないよう留意することが重要と言えるでしょう
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