勧告違反公表の事例から学ぶ消費者契約
2018/03/19   コンプライアンス, 消費者契約法

1 はじめに

 都消費者生活総合センターには、投資用マンションの勧誘に関するトラブル相談が、5年間で約1900件寄せられています。都消費生活条例に基づく是正勧告に従わない業者も出てきています。そこで本稿では、消費者契約の基本を確認したうえで、是正勧告の事例を検討し、企業にとっても個人にとっても安心・安全な消費者契約を締結するために法務部員がとるべき方策を検討していきます。

2 消費者契約の問題点

 契約は、申込と承諾という意思の合致によって成立します。契約の当事者は①個人と個人②企業と企業③企業と個人の3パターンに分類できます。
 会社は交渉にまつわる様々な事柄の仕方に精通している一方、個人はそうでない場合が多いです。企業・個人間の情報量・交渉力の格差は、様々なトラブルの原因となります。そこで、トラブルを未然に防ぐという観点から、消費者契約法・特定商取引法・割賦販売法などの法律で規制が行われています。

《参考》
『すぐに役立つ 改正法対応! 消費者契約法・特定商取引法・割賦販売法の法律知識』 藤田裕 2009年 株式会社三修社
 

3 消費者契約にまつわる法律等

 1968年、消費者の利益の擁護および増進について総合的推進を図り、国民の消費生活の安定と向上を確立することを目的とし、消費者保護基本法が制定されました。規制緩和の進展や情報技術の発達で消費者を取り巻く環境が大きく変わってきたことを受け、2004年に抜本的な改正が行なわれ、消費者保護基本法から消費者基本法に名称変更されました。
 1976年頃、消費者保護基本法に基づき生活消費条例が制定され、各地で生活消費条例が制定されていきました。東京都生活消費条例は1994年に制定されています。2004年の法改正を踏まえ、全国の生活消費条例が相次いで改正されていき、消費者の権利の尊重と自立の支援が基本理念に据えられるようになりました。

《参考》
コトバンクー消費者保護基本法
      消費者基本法

企業法務ナビ-改正消費者契約法ポイントまとめ

4 条例に基づく勧告違反公表の事例

(1) 東京都消費生活条例の仕組み
   東京都消費生活条例は、第4章第2節に「不適正な取引行為の防止」という節を設け、その中の第25条に「不適正な取引行為の禁止」という条文を設け、禁止する契約の類型を定めています。25条2項違反がある場合は知事による勧告がなされ(48条)、勧告に従わない場合はその旨が公表される(50条1項)という仕組みになっています。

【条文】 *下線部筆者
第四章 不適正な事業行為の是正等
第二節 不適正な取引行為の防止

(不適正な取引行為の禁止)
25条1項
1号 
 消費者を訪問し又は電話機、ファクシミリ装置その他の通信機器若しくは情報処理の用に供する機器を利用して広告宣伝等を行うことにより、消費者の意に反して、又は消費者にとって不適当な契約と認められるにもかかわらず若しくは消費者の判断力不足に乗じることにより、契約の締結を勧誘し、又は契約を締結させること
4号
 消費者を威迫して困惑させ、又は迷惑を覚えさせるような方法で、若しくは消費者を心理的に不安な状態若しくは正常な判断ができない状態に陥らせ、契約の締結を勧誘し、又は契約を締結させること。
同条2項 
 事業者は、消費者と取引を行うに当たり、前項の規定により定められた不適正な取引行為を行ってはならない。

(指導及び勧告)
第48条 知事は、第14条第2項、第16条第4項、第17条第2項、第18条第2項、第19条第3項又は第25条第2項の規定に違反をしている事業者があるときは、その者に対し、当該違反をしている事項を是正するよう指導し、及び勧告することができる。

(公表)
第50条 知事は、事業者が第10条第3項若しくは第46条第2項の規定による要求又は第12条、第23条若しくは第48条の規定による勧告に従わないときは、その旨を公表するものとする。

(2) 事案の概要
  投資用マンションとは、購入者自身が居住するのではなく、第3者に貸し出して家賃収入を得たり、売却することで利益を得るために所有するマンションのことをいいます。
《参考》:インカムラボ

 都が先月2月2日、勧告に従わなかったとして公表をしたのは、渋谷区円山町の投資用マンション販売会社「Reilis&Company(レイリスアンドカンパニー)」です。都は2015年10月、消費者が「勧誘は受けません」と断っているにもかかわらず、引き続き電話で契約の締結を勧誘していたこと(25条1項1号該当事実)などを理由に、是正勧告を行っていました。
《参考》:東京都ホームページ

 同社は是正勧告後も、「明確な理由もないのに断るなんておかしい」「うちも経費とか交通費とか時間とかを割いてやっているんですよ」などと迫った(25条1項4号該当事実)とされており、勧告に従わなかったことから、公表に至ったものと考えられます。条例に基づく勧告違反公表は初めてのことです。 

5 法務部員としての対策

①法務部において過去に問題となった消費者契約の事例や判例等について勉強会を開催し、現場で契約を取る営業部員に知識を付ける。
 判例の分析・過去の事例から法的問題を抽出することは、法務部の仕事です。まず法務部内で勉強会をし、契約締結の過程における注意点を取りまとめ、営業部員と共有することが必要であると考えます。

②お客様の声を募集し、消費者契約法違反の疑いがあると考えられる営業部員について、人事査定を下げる制度を設ける。
 法的問題に至らないものであっても、日々小さなクレームを分析し、法的問題に発生する可能性を減らしていくことが大切です。法務部員としては、人事部と連携を取り、このような制度を作ることで、営業部員において適切な契約の締結を強く意識させることができると考えられます。

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