改正消費者契約法ポイントまとめ
2016/11/20   消費者取引関連法務, 消費者契約法, 法改正, その他

はじめに

 平成29年6月3日に改正された消費者契約法が施行されます。そこで今回は改正のポイントをまとめてみます。
消費者契約法の一部を改正する法律(平成28年法律第61号)(出典 消費者庁)
 消費者契約法は、消費者と事業者の間の情報や交渉力の格差があるため、消費者を保護することを目的とした法律で、消費者と事業者との間の情報・交渉力の格差がある中で契約することに鑑みて規定された法令です。消費者に一定の要件のもとに契約の取消権(4条)や、消費者に不利な契約条項の無効(8条、9、10条)があります。
 今回の主な改正のポイントは以下の6つです。

①不実告知の契約に対しての取消の要件である重要事項について

 消費者契約法は、事業者が勧誘をするに際して、契約に関する重要事項の不実告知などにより、消費者が契約内容を誤認などした場合には、当該契約を取消しすることができるとしています(法4条)。
 今回の改正で、重要事項の対象に「物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものが当該契約者の生命、身体、財産その他の重要な利益についての損害又は危機を回避するために通常必要であると判断される事情」が追加されました(法4条5項3号)。
平成28年6月公布! 改正消費者契約法のポイントと対策 (第1回)
(出典 BUSINESS LAWYERS)

②過量契約による取消権の新設

 当該消費者にとって契約の目的物の分量、回数、期間が著しく過度な量の契約であることを知りながら事業者が勧誘をすることが、契約の取消事由として新設されました(法4条4項)。
 この契約の対象は過量販売(4条4項前段)と次々販売(法4条4項後段)です。
 過量販売は、当該消費者の事情に基づいて1回の契約で当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超える契約です。
 次々販売は、同種の契約を複数回繰り返し、当該消費者の事情に基づいて過去の同種契約を含めて当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超える契約です。
 どのようなものが対象かは消費者庁HPにも一問一答形式で例が出ています。
平成28年の消費者契約法改正により新設された過量契約による取消しとは
(出典 BUSINESS LAWYERS)

③不当条項の追加(消費者の解除権を放棄させる条項)

 今回の改正では、今まであった消費者が不利になる規定を無効とする規定にさらに、事業者の債務不履行があった場合に消費者の解除権を放棄させる条項、有償契約であって契約の目的物に隠れた瑕疵があった場合に消費者の解除権を放棄させる条項、の2点の解除に関する条項を無効の事由に追加しました(法8条の2第1号、2号)。
平成28年6月公布! 改正消費者契約法のポイントと対策 (第2回)
(出典 BUSINESS LAWYERS)

④消費者の利益を一方的に害する条項の前段要件(10条前段要件)の例示

 今回の改正は、この一般条項に、具体例として、「消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又は承諾の意思表示をしたものとみなす条項」を規定しました。
消費者契約法実体法の改正(その7)~不作為をもって意思表示とみなす条項
(出典 神戸合同法律事務所)

⑤取消権を行使した消費者の返還義務の規定の明確化

 改正民法121条の2第1項では取り消し権を行使した消費者は原状回復義務を負うので、購入したものなどを完全な形で返却することになります。
消費者契約法では、取消権を行使した消費者の返還義務の範囲については、給付の時に取消原因があることを消費者が知らなかった場合は、現存利益に限定されると解されています。
 民法が改正されても、消費者契約法では給付時に取り消し原因のあることを消費者が知らなかった場合に現存利益に限定されることを維持するために明文化しました。
取消権を行使した消費者の返還義務(出典 消費者庁)
消費者契約法実体法の改正(その3)~取消権を行使した消費者の返還義務の限定
(出典 神戸合同法律事務所)

⑥取消権の行使期間の延長

不当な勧誘を受けて契約した消費者をできる限り救済するため、取消 権の行使期間を6か月間から「追認をすることができる時から1年間」に伸長することとしたものです。追認することができる時とは「取消原因となっていた状況が消滅」し、かつ「その行為に取消原因があることを知った時」です。例えば詐欺によって騙された人であれば騙されたことに気づき騙した行為があったことを知ったときです。
取消権の行使期間(出典 消費者庁)

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