伊藤園に勧告、下請法違反について
2018/02/07   コンプライアンス, 下請法

はじめに

飲料大手の「伊藤園」(東京都)が清涼飲料「お~いお茶」などの製造委託を行っている下請け業者2社に対し、支払い代金を不当に減額していたとして、公取委は6日までに再発防止の勧告をしていたことがわかりました。減額した額は約1億1880万円に上るとされます。今回は下請法が規制する代金減額について見ていきます。

事案の概要

公取委の発表などによりますと、伊藤園は緑茶などの清涼飲料の製造を下請事業者に委託しておりました。同社は平成28年6月から平成29年5月までの間に、下請事業者2社に対し「特別協力金」の名目で下請代金を減額させていたとのことです。同社は一旦下請代金を支払い、下請事業者に同社が指定する金融機関の口座に特別協力金として振り込ませる方法を採っていたとされます。それにより減額した額は計約1億1880万円に上るとされます。公取委はこれに対し、再発防止や社内研修、従業員への周知徹底などを命じる勧告を行ないました。

下請法による規制

下請法では親事業者が下請事業者に対し、製造・修理委託などを行う際に書面の交付などを義務付けると共に、一定の行為を禁止しております。これらに違反しますと公取委は違反行為の再発防止などを命じる勧告を行ないます(7条1項)。勧告が行われますとその旨公表がなされ、勧告に従わない場合には独禁法に基づいて排除措置命令や課徴金納付命令が出されることがあります(8条、独禁法20条、20条の6)。また罰則として50万円以下の罰金が課される場合もあります(10条)。

対象となる事業者

下請法は一定の事業規模に基づく関係を有する事業者に適用されます。具体的には資本金3億円を超える事業者が資本金3億円以下の事業者(個人事業者を含む)に製造委託などを行う場合に、前者が親事業者、後者が下請事業者となります。同じように資本金が1000万円~3億円の事業者が資本金1000万円以下の事業者に委託を行う場合も同様の関係となります(2条1項~8項)。このように資本金額を基準として親事業者、下請事業者が决定されます。

親事業者の義務

下請法により親事業者に該当する場合は一定の義務が課されることになります。具体的には、①書面の交付義務(3条)、②書類の作成・保存義務(5条)、③下請代金の支払期日を定める義務(2条の2)、④遅延利息の支払い義務(4条の2)が挙げられます。書面とは委託契約などを行った際の、目的物の内容、下請代金、支払期日、支払い方法などを記載した書面です。また5条の書類とは委託の目的物の内容や受領期日、受領の際の検査、不合格の場合の扱い、給付の内容の変更等があればその内容、給付のやり直しをさせた場合はその内容と理由など記載した書面ということになります(公取委規則)。

代金減額の禁止

下請法4条1項各号では受領拒絶や代金不払いなどの行為を禁止しております。そして同項3号では「下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金を減ずること」を禁止しております。違法な減額行為としては、原材料価格の下落を理由とする減額、「歩引き」と称する減額、「協賛金」「協力金」名目で減額あるいは支払いの請求、通常手形払いを現金で払う際に「割引手数料」として代金から差し引く行為などが挙げられます。これらは違法となりますが、「下請事業者に責に帰すべき理由」がある場合には違法とはなりません。具体的には納入された品物に欠陥などが有り、受領を拒否した場合、親事業者が自ら修復した場合、下請事業者が納期を遅れた場合などが挙げられます。

コメント

本件で伊藤園は自社製品の販促のための特別協力金として下請事業者に約1億1880万円を支払わせておりました。下請事業者にはなんら責任の無い代金の減額に当たります。下請法では下請事業者に責任が無い場合、いかなる名目、方法、金額の多寡を問わず、また合意があったとしても違法となります。通常下請事業者は親事業者に対しては弱い立場にあるためです。伊藤園は減額分を既に支払ったとされております。公取委や中小企業庁は必要があれば立入検査や書面の提出を行ない違反行為が無いか調査します。その際に上記親事業者に作成が義務付けられた書面を調査することになります。書面が適切に作成されていなかったり、不備がある場合には下請法違反が疑われることになると言えます。下請法違反は独禁法と同じく排除措置命令や課徴金納付にいたる場合があり違反のペナルティは厳しいものとなっております。今一度書面に不備は無いか、不当な減額を行っていないか、不当な協力を求めていないかを社内でチェックすることが重要と言えるでしょう。

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