相次ぐ是正勧告、裁量労働制の濫用について
2018/01/31   労務法務, 労働法全般

はじめに

医療機器の米大手「メドトロニック」の日本法人が導入していた裁量労働制に関し、三田労働基準監督署から2度にわたって是正勧告を受けていた旨、BuzzFeedNewsが28日付けで報じています。法の要件を満たさない裁量労働制を不正適用し、残業代支払いを回避している例が後を絶たないとのことです。今回は裁量労働制について見直したいと思います。

事案の概要

報道などによりますと、メドトロニック日本法人は「企画業務型裁量労働制」を採用していました。しかし制度の運用を巡り労働基準法の要件や割増賃金に関する規定に違反しているなどとして従業員から労基署に対して申告があったとのことです。それを受け三田労基署は2016年12月と2017年10月の2度にわたって同社に対し是正勧告を行ったとのことです。同社は勧告を真摯に受け止め速やかに人事制度を変更したとしております。

裁量労働制とは

裁量労働制とは労働基準法で定められた「みなし労働時間制」の一種です。これには「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2種類があります。これらを採用した場合、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定められた労働時間働いたことになるということです。業務の性質上、労働者の裁量に委ねる必要があり、使用者が労働時間等の指定を行うことが困難な業種などで認められます。

専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制の場合、その業務の性質上労働者の裁量に委ねる必要がある一定の「対象業務」ついて導入することが認められております(労働基準法38条の2)。対象業務は厚労省令によって定められている19業種に限定されております(施行規則24条の2の2)。具体的には製品、技術などに関する研究開発業務、システムエンジニア、新聞などの記者・編集者、衣服や工業製品のデザイナー、放送ディレクター、コピーライター、ゲーム開発者、証券アナリスト、大学教授、弁護士や公認会計士などの士業などが挙げられております。そしてこの裁量労働制を採用するためには労働組合かまたは労働者の過半数を代表する者と書面により協定を締結する必要があります。

企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制の場合もやはりその業務の性質上、労働者の裁量に委ねる必要があり、使用者による指示が困難であることから認められる制度です。そしてその対象となる要件は専門業務型裁量労働制よりも厳格なものとなっております。具体的には、事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査、分析を行う業務内容であること、適切な知識、経験を有すること、裁量労働制を導入することにつき個別に合意があること、労使委員会が設置されていること、そして労使委員会の5分の4以上の賛成により可決されていること、就業規則か労働協約で採用する旨定めたこと、労基署に届出たことが挙げられます。

コメント

本件でメドトロニックは企画業務型裁量労働制を採用しておりました。企画業務型裁量労働制は上記のとおり要件が非常に厳格なものとなっております。まず前提として労使委員会が設置されていなければならず、また業務内容も企画、立案などの企業の中枢を担う、いわば労働の量より質がもとめられる役職の者が想定されております。そして労使委員会の賛成や労基署への届出等が必要です。詳しくは明らかにされておりませんが、同社はこのような幹部クラスに当てはまるべき制度を、通常の業務内容を受け持つ従業員に適用していたのではないかと考えられます。以上のように裁量労働制は業務の性質から労働の時間配分などを労働者自身に委ねる必要がある場合に適用されます。またこのような人材はそもそも十分な報酬が与えられていることが前提となっております。実質的に使用者の指示に服していながら、十分な残業代、割増賃金などが支払われていない場合には違法となります。近年この制度が濫用され、労基署による勧告や訴訟も増えております。裁量労働制の採用を考えている場合は、その制度趣旨を十分に理解し、賃金支払い回避の手段と考えないことが重要と言えるでしょう。

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