不二越が本社を東京に移転、本店移転の手続きについて
2017/07/18   会社法

はじめに

不二越は5日、本社を富山県から東京に移転し、本社を東京に一本化する旨発表しました。ロボット事業を強化するため関東でロボットの研究開発拠点を新設するとのことです。今回は本店所在地とその移転手続について見ていきます。

事案の概要

報道などによりますと、1925年に富山県富山市で創業した株式会社不二越は1990年から富山と東京に本社を置く、2本社体制をとっていたとのことです。切削工具、ロボットシステム、油圧機器などの事業を手がける同社は今年8月からロボット事業を強化するために、ロボット開発部門を東京に移し、約100人の開発スタッフも6割が東京本社に移る予定です。それに伴い登記上の本店所在地も東京に移し、富山本社は「事業所」となる予定とのことです。本店移転は2018年2月の株主総会で決議を経て実施することになるとしています。

本店所在地と本社

本店所在地とは会社の本拠となる「本店」の存在する地を言います。本店は一般的には「本社」と呼ばれることもありますが、会社法上の「本店」とは必ずしも同じではありません。「本社」は会社の事業の本拠地という意味で使われることが多く、会社によっては東京本社、大阪本社というように複数本社が存在する場合もあります。しかし会社法上の「本店」は一つの会社に一つしか存在せず、複数の本店を置くことはできません。

法律上の本店

本店の所在地は会社法上、定款の絶対的記載事項となっており、必ず定款で定めることになります(27条3号)。そして登記事項でもあることから具体的な場所が登記されることになります(911条3項3号)。ここで注意が必要なのは、定款と登記では若干の違いがあるということです。定款記載事項としての本店は「所在地」を、登記事項としては「所在場所」記載することになります。「所在地」とは最小行政区画を、「所在場所」は具体的に存在する場所を指します。たとえば定款で定めるべき「所在地」としては東京都渋谷区とし、登記すべき「所在場所」としては、東京都渋谷区◯◯町◯◯番◯◯号というようになります。定款で具体的な所在場所まで記載してしまうことも可能です。

本店移転手続き

上記のように本店の所在地は定款で定め、具体的な場所については取締役、取締役会で決定することが一般的です。本店を移転する場合も定款に記載された所在地、たとえば渋谷区内での移転であれば取締役の過半数、または取締役会決議で決定することになります。しかし定款に記載された所在地を超えて移転する場合には定款変更が必要となります。つまり渋谷区を超えて港区、あるいは大阪や愛知県などに移転する場合は株主総会の特別決議による定款変更を要します(466条、309条2項11号)。そして変更の時から2週間以内に登記する必要があります(915条1項、916条)。

その他の手続

本店移転があった場合は法務局への本店移転登記の他に、税務署や年金事務所、労働基準監督署やハローワークなどにもその旨届け出る必要があります。事業年度内か終了後か、また申告期限内か期限後かで法人税の申告書提出先も変わってくることになりますので税務署等で確認することが望ましいでしょう。

コメント

本件で不二越は富山本社と東京本社を置いていました。しかしこれは会社法上の「本店」ではなく、一般用語としての「本社」であり、本店所在地は富山県となっております。そして富山県外への移転であることから、定款変更が必要となってきます。来年2月の株主総会で特別決議による定款変更の承認を経て会社法上の本店移転となります。以上のように本店移転は定款所定の所在地区域内かそうでないかで手続が大きく異なってくる場合があります。区域内であれば取締役会決議等だけで決定でき、登記手続も非常に簡単です。しかし区域外であれば必要な決議だけでなく登記手続も管轄をまたいで申請が必要(経由申請)といった複雑なものとなることがあります。会社の事業の拡大や縮小、事業再編等で本店を移転することはよくあることと言えますが、本店移転の際にはどこに移転となるのか、定款の区域内か外かなどに注意し、必要な手続を確認しておくことが重要と言えるでしょう。

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