ウーバーを独禁法違反で提訴、デジタルカルテルとは
2017/05/08   コンプライアンス, 独占禁止法

はじめに

日経新聞電子版は1日、米国でAIによる価格決定が独禁法違反に当たるとして消費者がウーバーを相手取り訴訟を提起している旨報じました。AIを利用した価格決定が新しい形のカルテルに当たらないかが問題となっているとのことです。今回はAI利用の独禁法上の問題について見ていきます。

事件の概要

米国ウーバー・テクノロジーズはウェブサイトおよびアプリでタクシーの配車サービスを展開しております。その特徴は業者のタクシーだけでなく希望すれば一般人も自家用車を使用して旅客運送を行えるという点と、配車および価格決定を、その時々の需給状況に応じてAIが決定するという点にあります。ウーバーは2014年8月から東京都内でもタクシーの配車サービスを開始しております。本来は各タクシー業者がそれぞれ料金を決定するところ、ウーバーに登録している場合はそのAIが配送手配時に決定し、タクシー業者をそれに従うことになります。そこには本来あるべき価格競争が生じず料金が高止まりしており、独禁法の禁止するカルテルに該当し違法であるとして訴訟に発展しております。

カルテルとは

カルテルとは事業者同士が価格や供給量、販売地域等について競争を回避するために行う協定をいいます。公正な経済競争を阻害し消費者の利益を害することから多くの国では独占禁止法等により禁止されております。日本でもカルテルは独占禁止法上の不当な取引制限(3条)として規制されております。IT技術が発展し、あらゆるものがネットとつながるIoT時代において価格決定や在庫調整にもAIが利用されるようになりました。事業者同士が合意を行わなくてもそれぞれがAI等を利用することによって図らずも競争の回避効果が生じる可能性が指摘されております。それが場合によっては独禁法等に違反することになるのではないかということです。

独禁法上の要件

(1)共同行為
不当な取引制限(カルテル)の独禁法上の要件としてまず事業者同士の共同行為が挙げられます。互いに価格を何円よりも下げないといった取り決めなどを言います。これは客観的・外形的にそのような行為が存在するだけでは足りず、主観的にも「意思の連絡」が必要になります。これは明示的なものではなくとも、黙示的・暗黙的なものであっても該当することになります(東京高判昭和28年3月9日)。

(2)相互拘束
各事業者間で一定の内容の制限を相互に課すことも要件となっております。例えば上記の価格を何円よりも下げないといった取り決めを相互に守らせるということです。これには例えば協定を守らずに価格を下げた場合何らかのペナルティーを課すといったものではなくとも「意思の連絡」を通じて互いの行動を調整し合う関係が紳士協定的にでも成立していれば足ります。

(3)競争の実質的制限
上記の共同行為と相互拘束によって一定の取引分野における競争を実質的に制限することになる必要があります。一定の取引分野とはいわゆる「市場」のことを言います。競争の実質的制限とは価格や供給量等をある程度自由に決定することができる、いわゆる市場支配力を形成することをいいます。つまりカルテル行為によって一定の商品や役務の価格や供給量をある程度自由にできる場合に不当な取引制限に該当することになるということです。

コメント

ウーバーではそれぞれタクシー運転手がウーバーの従業員として勤務するのではなく、それぞれが独立の事業者としてウーバーに登録し、価格決定はAIが行うというものです。そこには本来あるべきはずの事業者同士の価格競争が行われておらず価格が高止まりしていることが問題となっております。たしかにタクシー市場においてウーバーが相当の、例えば50%を超えるシェアを有する場合、このAIによって「競争が実質的に制限」されることになる可能性はあると言えます。しかしウーバーの配車システムを利用するだけでは少なくとも各事業者間に価格等についての「意思の連絡」を認定することは困難と言えるでしょう。したがってこのウーバーシステムを利用しているだけでは、日本の独禁法上違法と認定することは難しいと思われます。しかし例えば価格を一定よりも下げないといった設定がなされたAIを使用し、各事業者もそれを認識した上でそのシステムに参入した場合は「意思の連絡」が認められる可能性がでてきます。急速なIT化、IoT化になかなか法制度が追いついていないのが現状ではありますが、今後法改正や政省令、ガイドラインの改正は十分有りえます。価格や供給量、在庫整理等をAI等に決定させる場合には市場への影響を考慮して今後規制の対象となり得ないかを注意することが重要と言えるでしょう。

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