主幹事証券に初の賠償命令、粉飾決算の責任について
2016/12/27   コンプライアンス, 金融商品取引法, 会社法

はじめに

東証マザーズに上場していたエフオーアイの粉飾決算で損失を被ったとして株主約200人が旧経営陣に賠償を求めていた訴訟で20日、東京地裁は旧経営陣に約1億7500万円、主幹事証券だったみずほ証券に3千万円の賠償を命じました。今回は粉飾決算が行われた際の責任について見ていきます。

事件の概要

半導体製造装置メーカー「エフオーアイ」は2009年11月に東証マザーズに上場しました。エフオーアイは2009年3月期の売上高で約118億円という巨額の架空計上を行っておりました。粉飾の疑いを受け、証券取引監視委員会は2010年5月に同社に強制捜査を行い、売上高の97%が架空であることが判明しました。エフオーアイは翌6月に上場廃止となりましたが、上場の際の主幹事証券であったみずほ証券に対して外部から粉飾の疑いが有る旨の投書が2度にわたって届いていたことから、同社株主ら200人はエフオーアイ旧経営陣とみずほ証券を相手取り損害の賠償を求める訴えを提起しておりました。

粉飾決算の責任

粉飾決算とは決算書の損益計算書の経常損益等を操作して悪化している経営状況を隠蔽し実際よりも良く見せ黒字決算化することをいいます。粉飾決算が行われると取締役等の経営陣には様々な責任が生じることになります。まず上場会社の取締役が有価証券報告書に虚偽記載を行った場合10年以下の懲役または1000万円以下の罰金が課されることになります(金商法197条)。粉飾決算に基いて本来できない配当(いわゆるタコ配当)を行った場合は違法配当として5年以下の懲役または500万円以下の懲役となります(会社法963条)。そして民事上も会社や第三者に対する損害賠償責任を負います(会社法423条、429条)。上場会社の場合、株主は金商法に基いて取締役等に賠償を請求することができます(金商法21条の2)。

株主による賠償請求

虚偽の有価証券報告書等を信頼して株主が株式を購入し損失を被った場合、取締役等に対し賠償を求めることが出来ます。この場合、民法709条等により不法行為責任を追求することもできますが、損害額や虚偽記載と損害との因果関係等を被害者側ば立証しなければなりません。そこで金商法21条の2や22条の2等では要件を緩和し損害算定の推定規定を置いております。要件としては①有価証券報告書の重要な事項に虚偽や必要な記載が欠けていること②有価証券報告書の縦覧期間内に株式を取得したこと③虚偽記載によって損害が生じたこと④株主が虚偽記載であることを知らなかったことが挙げられます。そして損害額は虚偽記載であることが公表される前1ヶ月間の株価の平均から公表後1ヶ月間の株価の平均を控除した額が損害と推定されることになります。

主幹事証券とは

株式会社が証券取引所に上場する際しては一般的に数社の証券会社が関与して上場を目指すことになります。これらの証券会社を幹事証券会社と言います。その中で中心的な役割を担う証券会社を主幹事証券会社と言います。主幹事証券会社は上場申請書類の作成を補佐したり証券取引所の審査の対応や上場時の募集株式の株価決定、引受等を行います。その際には上場を目指す会社の業務状況等も当然に調査し、助言を行うことになります。

コメント

エフオーアイの粉飾決算の公表前の株価は770円から850円の間を行き来していました。巨額の粉飾が発覚したことにより東京証券取引所は即刻上場廃止の決定を行い株価は事実上0となりました。東京地裁は旧経営陣らに全部認容にあたる1億7500万円の賠償を命じ、主幹事証券であるみずほ証券にたいしても約3千万円の賠償を命じました。谷口裁判長は粉飾を示唆する投書があったことからみずほ証券は売上の実態確認のために追加調査をする義務があったとして主幹事としての注意義務を尽くしていたとは認め難いと指摘しました。粉飾決算による訴訟で主幹事証券に賠償命令が下されたのはこれが初となります。またエフオーアイは証券取引史上最速で上場廃止となったことになります。粉飾決算とまでは行かなくても不適切会計と呼ばれる虚偽記載は今なお少なくないと言われております。裁判所で破産決定を受けた企業の相当数で虚偽記載が発覚しております。経営不振が即融資打切や入札資格喪失につながることから不適切会計を行ってしまう企業は少なくないと言えるでしょう。しかし上記のとおり粉飾決算を行った企業の責任は極めて重く、粉飾により一時的にしのいだとしてもほとんどの企業は倒産に至り、経営陣には重い責任が生じることになります。決算書作成には今一度慎重に行うことが重要と言えるでしょう。

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