法務人材の現状
2016/12/09 コンプライアンス, 法務採用, 民法・商法, その他

はじめに
電通に過労死問題で強制捜査が入り、その衝撃が世間を駆け巡っています。昨今では、消費者や労働者の情報発信能力が高まり、「炎上」など企業の信頼に関わる問題で企業内コンプライアンス(法令遵守)が重視されています。そのため、企業における法務人材への需要は年々増加していると言われています。今回は、法務需要の増加とその対策について見ていきたいと思います。
需要と供給
近年企業の法務人材の需要が拡大しているといわれており、人材紹介会社の雇用調査によってもその傾向がみられています。また、公益社団法人商事法務研究会の第10回実態調査によりますと、前回調査と比較して法務部門を設置している企業が5%増加し、法務専門部署のある企業は7割に達したとされます。弊社の独自調査によっても特に若手については、2010年から2016年までで、求人数は約10倍に達しています。
一方で人材の供給量は短期に急激に上昇することは難しく、人材の売り手市場と見受けられます。アジアでの雇用調査では、法務を含めたバックオフィス系の人材に対する求人倍率が、6倍に達した年もっあたようです。
ロバート・ウォルターズ・ジャパン(PDF)
@Press
第10回法務部門実態調査の調査結果(PDF3ページ調査結果の概要)
背景
このように法務人材への需要が増加している背景には、国際化、コンプライアンス意識の増加などがあります。詳しく見ていきましょう。
国際化についてみると、企業は、国内外に関わらず市場の拡大を目指しており、いわゆる「グローバル化の波」が押し寄せています。このことを表すようにある求人調査では、上述のようにバックオフィス系のグローバル転職求人倍率が6倍に達しています。これは、海外での異なる法律や文化に対応した契約や社内体制を構築できる人材が求められているためだと考えられます。また、コンプライアンスについてみると、ネット上での炎上騒ぎが度々見聞きされる中、企業においても新たに法務部やコンプライアンス部を立ち上げる事例があり、コンプライアンス意識の徹底や従業員への教育・浸透、労務安全衛生や個人情報保護への関心が示されています。そこでそのような営業上のリスクを管理するための人材として、法務人材が求められているようです。
対策
法務経験者
法務人材として人気のある人材が、法務経験のある中途採用者です。法的知見を有しかつ企業内での立ち回り経験があり、即戦力となることがメリットとして評価されているようです。デメリットとしては、市場に人材が少なく獲得に労力や資金がかかりやすいということがあります。
インハウスローヤー
インハウスローヤー(組織内弁護士)とは、司法試験を合格した方が弁護士事務所ではなく、企業内で働く場合を指します。そこでは、法的知見を企業内で生かすことが期待されており、求人によっては弁護士資格を応募条件としている場合もあります。場合によっては弁護士になる前の修習生を求める企業もあります。弁護士資格を有するスペシャリストとして業務に参画できるというメリットがあります。デメリットとして、弁護士資格者は、合格者数が少なく、元々の母数が少ないこと、弁護士事務所への就職を希望される方も多いため、少ない母数から更に、企業へ就職を希望する方という形で限定され、求める人材が発見できない可能性があります。また、給料の水準が一般的に高いです。
インハウスローヤーにつていは、現在供給が不足していることから、企業法務の経験のない方でも採用するという企業も存在しております。
法科大学院修了生
いわゆるロースクール修了生です。司法制度改革の一環として法科大学院が創設され、ここを修了した方が法科大学院修了生です。ほぼ全ての方が司法試験を受験した経験があり、弁護士資格を持つ方々と同様の教育を受けています。現在、大手の企業を中心に採用数が増加しており(最新の調査では、法務担当採用の方針として、未経験で弁護士資格を有しない法科大学院修了生を24.4%の企業が採用するとしています。)、文部科学省の発表したデータによりますと、法科大学院修了生採用企業の満足度は高く、70%以上の企業が採用に満足しているとの結果が発表されております。法務人員が不足している現状で、法的素養を有する人材を新卒とそれ程変わらない安い給料で雇用することが可能なこともメリットなようです。デメリットとしては実務経験がなく、戦力化するのに数か月かかることが考えられます。
ただし、ロースクール修了生については、大学浪人生のような過酷な勉強の日々の中、1万時間を超える学習による法的素養があります。この様に勉強癖のついた色の付いていない人材を自社に合わせて成長してもらうという事が可能です。
終わりに
以上に上げさせていただいたものは一つの参考です。法務人員は他部署からの移動等によっても獲得されることがあります。しかし、統計を見ますと需要が供給に対して多いことも事実で、企業にとっては選択肢を増やすことも一案かもしれません。選択肢を増やすことにで、より自社に最適な人材を発見する可能性が高まるかもしれません。
参考
会社法務部第11次自体調査の分析報告(株式会社商事法務)5ページ他
BUSINESS LAW JOURNAL 2017年1月号、ビジネス法務2017年1月号
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