野外イベントの展示物燃え5歳児死亡 主催者と行政の責任
2016/11/09 訴訟対応, 民事訴訟法, その他
東京都の神宮外苑で11月6日催されていた野外コンサートで、展示されていたジャングルジムが燃えて5歳男児が焼死しました。男児を救助しようとした父親と40代男性もやけどを負いました。火元は発熱した電球とみられています。
結果からみると、使用した電球を適切に管理していれば防ぐことができた事故です。この事故を防ぐことはできなかったのか、関係者の責任について考察します。
主催者の刑事・民事責任
まずは野外コンサートの主催者である東京デザインウィーク株式会社の刑事責任が問われます。このたびの事件では被害者が死傷しているため、業務上過失致死傷罪の成否が考えられます。
しかし、法人を業務上過失致死傷罪で処罰することはできません。同罪を定める刑法211条によると、業務上過失致死傷罪は「業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。」としています。この「者」に法人が含まれれば法人処罰も可能ですが、判例・通説によると、この文言は自然人のみを指し、会社などの法人は含まないとされています。
とはいえ、自然人である法人代表者は同罪で刑事責任が問われる可能性があります。刑罰権には遺族感情を満足させるという役割が事実上あります。業務上過失致死傷罪との関係では、遺族は代表者にその刑事責任を問うことで処罰感情を満足させることになります。
そうすると、遺族としては納得できないでしょう。法人そのものを処罰したいということが遺族の率直な感情と考えられるからです。
しかし、民事の問題として本事件を捉えると、遺族は東京デザインウィークに対して不法行為に基づく損害賠償責任を問うことは可能です。このような民事責任を厳しく問うことで、遺族は気持ちを整理することになるでしょう。
また、損害を与えた法人の活動に支障が生じることが考えられます。報道等により法人名が周知され社会的信用は大きく損なわれる可能性があるほか、株式会社が損害を与えた場合、代表者が刑に処せられるなどの一定の事情があれば取締役の欠格事由に該当し、新たに取締役を選任しなければならないなどの対応が必要となるからです。
行政の責任
このたびの事件は神宮外苑という公共の場所で起こったため、行政の管理責任についても問題となるところです。しかし、事故の原因は被害男児が遊んでいた遊具の照明器具の不備です。これは行政よりも主催者の落ち度によるものといえます。今回の事故は、利用する照明器具を安全性の高いものに限定したり、器具使用中は定期的に巡回して安全を確認したりすることを義務付ければ防ぎ得たといえますが、行政に事故結果への予測可能性を問えるのか課題となります。
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