セクシャルマイノリティ(性的少数者)と企業の在り方の変化
2016/07/25   労務法務, コンプライアンス, 労働法全般

はじめに

厚生労働省は、6月27日、労働政策審議会の分科会を開き、職場での性的少数者への差別的な言動がセクハラに当たることを、男女雇用機会均等法に基づく事業者向けの「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき処置についての指針」(いわゆる「セクハラ指針」)に明記することを決めました。
この指針改正は、差別や偏見をなくし、性的少数者が働きやすい環境を作ることが目的とされ、来年2017年1月1日に施行されます。
出典:「LGBT差別はセクハラ」 指針に明記へhttp://mainichi.jp/articles/20160628/ddm/012/010/166000c

セクシャルマイノリティ(性的少数者)・LGBTとは

セクシャルマイノリティとは、社会の中で、普通と思われている性の在り方に当てはまらない人たちのことをまとめて指す総称です。
LGBTとは、「レズビアン」「ゲイ」「バイセクシャル」「トランスジェンダー」、すなわち、順に女性同性愛者、男性同性愛者、両性愛者、出生時に応じて割り振られたジェンダーと自らのアイデンティティが一致しない人の総称を意味します。
電通ダイバーシティ・ラボが、2015年に全国69,989人を対象にセクシャルマイノリティに関する広範な調査を実施した結果、セクシャルマイノリティに該当する人は、7.6%にまで上ることがわかりました(なお、2012年調査では5.2%)。
しかし、近年、メディアの影響もあってか、社会全体としてのセクシャルマイノリティの認知度は高まっているものの、企業の職場における認知度は、未だ低いと考えられています。
出典:電通ダイバーシティ・ラボが「LGBT調査2015」を実施http://www.dentsu.co.jp/news/release/2015/0423-004032.html

指針改正の経緯

1.改正の経緯
現在施行されている指針に従っても、セクシャルマイノリティに対する性的な言動はセクハラの対象に含まれていると考えられてはいます。
しかし、現在の指針においては、セクシャルマイノリティに関して、具体的に明文化されていないため、その解釈に曖昧さが生じてしまう恐れがありました。
そこで、今回の改正によって、「性的指向・性自認に関するいじめ・嫌がらせ等」が、セクハラ指針に盛り込まれ、この点が明確化されました。
2.過去に報告されたセクシャルマイノリティに対するセクハラ被害の具体例(一般社団法人社会的包摂サポートセンター平成26年度報告書参照)
・女性の服装を着て出勤すると、「おかま」と呼ばれる
・「女なのに、仕草が男のようで変だ」と言われる
・男性が、職場で女性として扱うように申し出たところ、断られた
 など

セクシャルマイノリティと企業のあり方

1.上述のように、セクシャルマイノリティの方は一定程度存在するにもかかわらず、企業内での無理解に基づく周囲の言動が、その本人の仕事に対する意欲を失わせ、精神的に追い詰めている可能性があります。
来年1月施行の指針においては、このような職場でのセクハラの内容やセクハラがあってはならない旨の方針を明確化し、社員に周知・啓発することが事業主に課されています。

2.従いまして、企業としては、まず、社内規定にセクシャルマイノリティに対するいじめ・嫌がらせの禁止に係る規定を新設することや既存の規定の見直しなどが求められることになります。
そして、事実関係を調査・確認した場合には、セクハラ被害を受けた方に対する対応と、セクハラをした者に対する適正な措置が求められます。
また、セクハラ被害を受けた方は、企業以外にも、都道府県労局の雇用環境・均等部に相談することもでき、セクハラの事実が認められると、会社側に行政指導が入り、セクハラ加害者も処分を受けることになります。
仮に、このような事態になると、企業イメージも悪化し、企業全体の不利益へと発展することになりかねません。
このような事態を避けるべく、一般的なセクハラと同様に対処できることはもちろんこれを行い、また、セクシャルマイノリティに対するセクハラ固有の問題については別の視点からの配慮をした上で、適切な措置を採ることが重要となってきます。例えば、相談者が、セクシャルマイノリティであることの公表を躊躇っているのであれば、この情報の秘匿の厳守をした上で、対応することが必要となります。

コメント

今後は、政府や専門機関が、一般的なセクハラとセクシャルマイノリティに対するセクハラの違いを調査・認識した上で、セクシャルマイノリティに対するセクハラに該当する具体例などを示すことになると思います。企業としては、これに合わせ、企業全体の認識を変え、柔軟に対応していくことが強く求められそうです。セクシャルマイノリティの場合には、カミングアウトされていない場合も多く、上司や同僚が無自覚で傷つけることも有り得るため、今回の指針の改正を機に、各企業が、早期に社内規定の策定・見直しおよび周知徹底をすることが必要となります。
また、今回の動きおよび企業の取り組みに伴って、法制化されることも今後有り得るので、各企業は積極的な情報収集をする姿勢も重要となるでしょう。

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