労働移動支援助成金、支給要件厳格化へ
2016/03/04 労務法務, 労働法全般, その他

はじめに
厚生労働省は労働移動支援助成金の支給要件を4月から厳格化する方針を固めました。雇用の安定を図る趣旨であったこの制度が、逆にリストラを促進している可能性があるとのことです。労働移動支援助成金とその問題点について見ていきたいと思います。
労働移動支援助成金
労働移動支援助成金とは、事業規模の縮小等にともない離職を余儀なくされた従業員に対し、再就職の支援を行う企業や受け入りを行う企業に助成金を支給する制度です。送り出し企業と受け入れ企業の両者に支給されます。
(1)再就職支援奨励金
送り出し企業に支給されるのが再就職支援奨励金です。①離職する従業員の再就職を就職支援会社(人材会社等)に委託した場合、②求職活動のために休暇を与えた場合に支給されます。支給金額は再就職支援委託時に10万円、再就職実現時に委託費用の2分の1-10万円というように定められております。さらに再就職にむけて訓練やグループワークを実施した場合は支給額が上乗せされます。
(2)受入れ人材育成支援奨励金
受入れ企業側に支給されるのが受入れ人材育成支援奨励金です。対象従業員が離職後3ヶ月以内に期間の定めのない労働者として雇入れ、継続雇用が確実である場合に支給されます。さらに訓練(OJT、OffJT等)を行った場合にも別途支給されます。
問題点
この制度は雇用の安定を図ることを目的として創設されました。これにより業績悪化企業の人員整理と従業員の転職を促進することが狙いです。しかし人材会社がこの制度を使って利益を得るために、企業にリストラを奨めている点が指摘されはじめました。人材会社が退職勧奨のノウハウを企業に提供し、企業はこの制度を使って委託料を抑えた上でリストラができ、人材会社は委託料が入る。すなわち助成金は全て人材会社の利益となる仕組みが出来上がっているということです。悪質なケースでは、違法な退職強要をさせた事例もあったようです。
コメント
雇用の安定と企業の人員整理の調和、欧米型の人材流動化を促進することを想定して創られた制度ですが、再雇用への支援方法と支援金支給要件等の中身に杜撰な点があることも否定できません。まず送り出し企業の再就職支援方法ですが、この制度では人材会社に委託するか、従業員に休暇を与えた場合しか規定されておりません。これでは人材会社と当人に丸投げしているだけとも言えます。具体的にグループ企業や同業他社に雇入れの打診をする等の詳細な支援方法を定めるべきだと言えます。また支援金支給についても、従業員の自主的な求職活動に対して、従業員本人への支給も盛り込む必要があるのではないでしょうか。厚労省は人材会社が企業にリストラを提案したり、人材会社が関与していないことを、助成金申請書に明記させたりすることを検討していますが、実効性には疑問が残るところです。事業縮小により人員整理を行わざるを得ない場合は、違法な退職強要とならないよう、従業員の意思を尊重したうえで十分な話し合いが必要と言えるでしょう。
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