ダイコー事件から考える廃棄食品問題
2016/01/27 コンプライアンス, 民法・商法, その他

1 問題の経緯
昨年10月、カレーチェーン店CoCo壱番屋を運営する壱番屋は、冷凍ビーフカツ約4万枚の処分を産業廃棄物処理業者のダイコー(愛知県稲沢市)に委託した。
ところが、今月11日、愛知県内のスーパーで買い物をしていた壱番屋の従業員が、市場に出回るはずの無いそのビーフカツを店頭で見つけ本部に報告したところ、横流しが発覚した。
ダイコーから廃棄カツを購入し仲介業者に転売していたのは、岐阜県羽島市の製麺業者みのりフーズだった。同社の倉庫からは壱番屋製品以外に108品目が見つかっており、これまでにイオンやニチレイフーズ、マルコメなどが製造・販売していた賞味期限切れの食品が確認されている。
この事件を受け、環境省と農林水産省は今月21日、食品リサイクル法に基づきダイコーへの立入検査を始めたと発表した。
2 登録再生利用事業者
ダイコーは食品リサイクル法に基づき、食品廃棄物を用いて肥料などを製造する「登録再生利用事業者」として国に登録している。
「登録再生利用事業者」は、再生事業が周辺の生活環境に支障がないことや、事業をするのに十分な経理的基礎があることなど、一定の要件を満たした事業者を国が登録する制度である。この制度は、優良業者を育成し、食品資源のリサイクルを促進するのが目的で、要件に適合しなければ取消しになる。
環境省と農林水産省は、ダイコーについて、登録取消しも含め処分を検討する。
3 横流しの防止策
大手食品卸では、食品廃棄について、業者が廃棄物を回収に来て、その後にこう処理をしたという産業廃棄物管理票(マニフェスト)を受け取るだけで、廃棄の現場を見ることはなく相手を信じるしかない状態だ。このように食品廃棄は取引のある産廃業者に丸投げされる例が多く点検機能が働いていたとは言いにくい。実際にダイコーは壱番屋に対してマニフェストで全て堆肥処理した、と虚偽の報告しており、壱番屋もこの報告を受け廃棄の現場を確認することはなかったため、点検機能が働いていたとはいえない。
壱番屋は今回の事件を受け、包装を外して生ごみと混ぜてから処理を委託することを決めた。製品の状態のまま廃棄する場合は、工場からの搬出から処理まで社員が必ず立ち会うという。
また、今回の事件以前から対策をとっている企業もある。アサヒグループホールディングスは、処理を委託する廃棄物の処理工程をオンラインで管理して不正を防ぐ仕組みを既に取り入れている。日清食品は委託先の業者から処分後の商品写真をもらうか、社員が処理に立ち会うようにしている。
4 最後に
今回の問題の元凶の1つは廃棄委託した商品を横流ししたダイコーにあるが、企業側の廃棄物への関心の薄さにも課題はある。
そして、食の安全については、異物混入や産地偽装、加えて今回の廃棄食品の横流し問題を受け、企業に向けられる視線は厳しさを増しており、点検機能の見直しが迫られる。
また、今回の事件を通して、食料廃棄そのものについても目を向けるべきであろう。日本ほど大量に食糧を輸入しながら廃棄を続けている国はなく、廃棄食品の量を減らす取り組みも必要不可欠だろう。
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参照:日本経済新聞2016年1月22日・26日付
日経MJ2016年1月22日付
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(財)食品産業センター
法務省
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