特許庁 海外で知的財産権を侵した場合の保険制度の導入を決定
2015/12/02 知財・ライセンス, 特許法, その他

1 制度内容
特許庁は2016年度から中小企業が海外で知的財産権を侵した場合の訴訟費用の肩代わりをする保険内容を導入する。
特許庁と商工会議所などの中小企業団体が保険料を折半で出し、損保などに保険業務を委託する。企業は保険料を直接支払わず、団体への加盟費用などで賄う仕組みだ。
2 制定の経緯
(1)民間における損害保険設計の理論的整理の必要性
民間の損害保険会社などが手がける訴訟保険商品は、中小企業に浸透しているとはいえない。民間における損害保険は、その設計において、加入者数の確保、事故のリスクの高いものだけが加入し、低いものが加入しない逆選択といった問題が解決されていない。これらの対応策として、公的制度のバックアップの検討が必要とされていた。
今回の保険制度は、特許庁という通常民間と比べ信頼性の高いとされる公的機関が関与するものであるから、一定の加入者数の確保が見込まれる。また、商工会議所などの中小企業団体は、事故のリスクの高いものと低いものを包括的に含むと考えられることから、逆選択の問題も一定程度回避できる。
このように、今回の保険制度は、従来民間における損害保険設計において問題とされていた点について、解決を図ろうとするものである。
(2)海外における知的財産侵害訴訟
知的財産権に 関する国際的な紛争が裁判になった事例は未だ多いとまではいえないが、経済のボーダーレ ス化が進むなかで次第にその数を増やしてきている。
日本の古典的な特許侵害訴訟の理解は、第一に、日本における発明の実施行為はあくま でも日本の特許権を侵害する可能性が有るに止まり、外国の特許権を侵害することはない(属 地主義)というものである。第二に、日本の裁判所は、日本の特許権の侵害事件を扱うに止まり、外国の 特許権の侵害事件を取り扱うものではない(裁判管轄の問題)というものであった。ところが、最近では、いずれについても揺らぎがみえるようになっており、特許権侵害の訴訟リスクは年々増してきているといえる。
また、環太平洋経済連携協定(TPP)の大筋合意で、今後は新興国でも知財制度の整備が予想される。そのため、知的財産権の侵害に対し、現地政府による取り締まりや競業企業による告発が増える結果、中小企業が海外に進出した際に現地で特許や商標を侵害されたとして、訴えられるリスクが高まることとなる見通しだ。
このような訴訟リスクは、中小企業の海外進出を足踏みさせる要因になりかねない。
そこで、今回の保険制度を導入し、訴訟費用の負担をなくすことで中小企業の海外進出を後押しすることが特許庁の狙いだ。
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