日本の難民制度とあるべき企業の対応
2015/11/13   外国人雇用, 労働法全般, その他

 政治的迫害、民族紛争、宗教対立などの理由で自己や家族の生命・身体を守るため、国外に庇護と援助を求める難民問題が最近ではシリア内戦を契機に注目を集めています。いち早くドイツが難民受け入れを表明する等難民に関するニュースが紙面を賑わせています。そこで今回は1日本の難民制度の歴史、2難民認定手続と難民として認定された場合の効果とその問題点を検討し、3企業と法務部等のあるべき対応について考察していきたいと思います。 

1  日本難民制度の歴史

 1970年代後半、社会主義体制の移行の混乱からベトナム・ラオス・カンボジアからの難民(いわゆるインドシナ難民)を日本は政府の事業として掲げたのが日本の難民政策の出発点です。インドシナ難民受け入れ事業が終了する2006年までに約11,000人を受け入れました。1981年に難民条約に加入した後、出入国管理及び難民認定法が整備され、難民を受け入れるとともに2010年度から3年間で90人のミャンマー難民を受け入れるアジア初となる「第三国定住」プログラムを提唱・導入しています。

2  難民認定手続と難民として認定された場合の効果
(1)難民認定手続
 日本で難民としての保護を求める場合法務省入国管理局に対して難民認定の申請をすると入国管理局の難民調査官と面接をし、難民認定可否の通知がされます。そこで難民認定されなくても難民審査参与員(行政から分離された独立の機関)との面接、異議申し立て、人道的配慮による在留特別許可、行政処分の取消しの行政訴訟の各種不服申し立て手段が用意されています。なお難民認定申請中は本国に強制送還されず、申請から6ヶ月経過すれば日本での就労が可能となります。
(2)認定の効果
 日本で難民認定されると1~3年間の定住者としての在留資格の付与、国民健康保険加入の申請が認められ、市・区役所を通じて福祉支援を受けることができます。また付随的に政府の委託を受けた財団法人アジア福祉教育財団難民事業本部が、日本語教育・日本での生活オリエンテーション、職業斡旋を含む定住支援プログラムを提供しています。
(3)偽装難民の問題点
 難民認定申請中は本国に強制送還されない上に申請から6ヶ月経てば就労も可能となるだけでなく、不認定となっても難民認定の再申請や異議申し立てを繰り返せば日本で働き続けることが可能です。難民認定を申請する外国人はこのシステムの悪用に関する情報を各国で暗躍するブローカー(難民認定申請の方法や就職のあっせん等をする代わりに手数料をとる)から仕入れ、明らかな出稼ぎ目的や退去強制逃れのための偽装難民が難民認定申請をするのがほとんどだという現実があります。
(4)国の新たな取り組み
 法務省は9月15日難民認定制度濫用防止と迅速な人道的支援を図るため第5次出入国管理基本計画を決定した。同計画で明らかに難民認定の要件を満たさない場合に簡易に処理することや同じ主張を繰り返す再申請者らに対し在留は認めるが就労は許可しないこと、従来の制度では難民に該当しないものの国際的な保護が必要なときは難民認定する仕組みの創設等の方針を盛り込んでいます。

3 企業の対応
(1)難民企業サポートファンド(ESPRE)
 難民企業サポートファンド(ESPRE)はNPO法人難民支援協会(JAR)と協力し、最高100万円程度の融資と経営支援をすることにより、難民企業家の手助けを行いその自立を支援しています。既に中古自動車やレストラン事業で難民の方が活躍されています。
(2)ユニクロが取り組む難民インターンシップ
 ユニクロは2011年から日本で難民と認定され定住が認められた人と家族を対象に日本国内のユニクロ店舗で就業体験をし、難民の自立を支援するインターンシップを行っています。2011年の受け入れ開始からこれまで13人が参加し、10人が本採用されています。
(3)法務部等の対応
(a)在留資格・期間の確認
 日本に在留する外国人は在留資格・在留期間の範囲内で就労することが認められています。難民と認定された場合在留資格は「定住者」となるので在留期間に制限はあるものの、就労に制限は設けられていません。また難民を雇用すると難民外国人の氏名、在留資格、在留期間等をハローワークを通じて厚生労働大臣に届け出ることが義務付けられています。
 万一難民認定を受けていないことを知りつつ雇用すると入管法に基づく不法就労助長罪が適用され3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はこれを併科することが定められています。難民認定を受けていないことを知らなかった場合に同罪で処罰されることはありませんが、パスポート又は外国人登録証明書等により在留資格・在留期間を確認することが大事です。
(b)難民援助制度の告知
 アジア福祉教育財団は日本語教育等を受けることを希望する難民の方に対し、無料で4ヶ月間の日本語教育・日本社会へ適応するための学習・就職あっせん等の制度を行っております。また担当の職業相談員から就職のあっせんを受け、難民の方を雇用した場合には援助金が支給される職場適応訓練が存在します。当該制度の告知は厳密には法務部等の役割でないかも知れませんが金銭的観点だけでなく、人道的・企業イメージ向上の観点からも法務部等の積極的な対応が望まれます。

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