「ノークレーム・ノーリターン」特約、どこまで有効?
2015/11/04 契約法務, 消費者取引関連法務, 民法・商法, 消費者契約法, その他

概要
昨今ネットオークションや中古販売サイトといったECサイトでは「ノークレーム・ノーリターン」「現状有姿売買」といった特約が付されている場合が多くなっている。「ノークレーム・ノーリターン」とは、苦情・返品は受け付けませんという意味であり、「現状有姿売買」とは現状あるがままの状態で引き渡しますという意味である。いずれも商品に問題があっても責任は受け付けない旨の特約である。商品に隠れた瑕疵が存在する場合には民法では解除・損害賠償が出来ると定められている。いわゆる「瑕疵担保責任」であるが、これらの特約は、この責任を排除するために設けられるものである。
有効性
はたしてこのような特約は有効であろうか。契約自由の原則から民法上は有効と言えるであろう。しかし大阪地裁平成20年6月10日判決では以下のように判示されている。本事件の概要は、中古車販売業者がヤフーオークションで個人消費者に対して中古のシボレーを販売したものである。本件業者は、燃料ポンプの故障以外は状態は良く、燃料ポンプについては交換する旨伝え、本件取引は本来事業者向けであること、現状有姿売買であることを説明した。ところが引渡し後、次々に故障が発生し、買主は解除・損害賠償を求めたものである。大阪地裁は、瑕疵の存在を認めた上で、本件取引が元々事業者向けであったこと及びその点を説明していたとしても、買主は個人であることに変わりはなく、事業者と個人との取引であって、消費者契約法8条1項~3項、5項に言うところの責任全部免除条項に該当し無効であるとした。つまり、個人対個人、事業者対事業者の場合は、このようなノークレーム・ノーリターン特約も有効となるが、事業者対個人の場合は無効となる。
対策
このように事業者が個人を対象として取引を行う場合は、このような免責条項は無効と判断されてしまうことになる。そこで対策として、対象商品に不備・不具合が存在している場合は、買主に十分説明した上で、その点も納得して契約を結んでもらえるようにすることが必要である。そうすることによって瑕疵を契約内容に含ませてしまい、「隠れた瑕疵」に当たらなくすることが可能となる。消費者の購買意欲を誘う説明との兼ね合いもあり、どこまで説明するべきかは難しいところではあるが、クレームがつく可能性のある点はマニュアル化する等して説明を徹底することが望ましい。
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