お客様は神様なのか?
2015/07/30 法務相談一般, 刑事法, その他

概要
スーパーで店員を土下座させたとして会社員の男が逮捕されるなど、ここ最近、コンビニエンスストアなどで過剰なクレームを行う事件が相次いで報道されている。そこで、平成25年に起きた衣料品チェーン「しまむら」で店員に購入したタオルケット(980円)が不良品だったとクレーム(従業員の商品管理の悪さの為に客に損害を与えた)を付けて土下座を強要し、その様子を撮影した写真をツイッターに投稿した女性が強要罪で逮捕された事件をもとにクレームにより生じる法的問題についてとりあげる。
しまむら土下座事件と法的問題
強要罪(刑法223条1項)は、脅迫・暴行を用いて、人に義務のないことを強要することであり、その未遂も処罰されることになっている(刑法223条3項)。この罪は、刑法上の脅迫・暴行にあたる行為によって、相手に義務のないことを行わせる、または行うべき権利を妨害したことを必要する。本事件において土下座を強要することが「人に義務のないことを行わせる」ことに該当することは問題ないが、脅迫又は暴行の要件が満たされるかは微妙な場合もある。例えば、土下座をしなければ泣き止まないと強要したとしても強要罪と認められないこともあり得る。
また、本事件でいえば行き過ぎたクレームへの対応を余儀なくされたり、『土下座をした店員の写真をツイッターに投稿した行為』により店舗業務に支障が生じた場合には、更に威力業務妨害罪にあたる可能性もある(刑法233条)。なお、威力業務妨害罪に該当する場合には、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されることになる。
さらに、本事件のように土下座姿を動画に投稿した場合には、その動画によって店員・店舗の社会的評価を低下させるおそれのある行為とも捉えられるので、名誉棄損罪(刑法230条)が成立する可能性も十分考えられる。
注意※刑法223条1項
「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。」
コメント
クレームに発展した店側の落ち度もケースバイケースなので、どのような対応が適切かは一概に言えないところはあるが、しまむら事件について真摯な謝罪の対応として土下座まで求めるのは行き過ぎとの意見も多い。適切な対応をすることは店と客の信頼にもつながる重要な場面ではあるが、常に客の要求に応える必要はなく、「応じられない」と毅然と対応すべき場面では、お店側も臆することなく対応できるようにお客の声を録音させていただきたい旨を伝える、謝罪しても怒りがやまずその場に居座る場合には不退去罪にあたる旨を伝える等冷静さを取り戻してもらう、それでもなお居座る場合には警察を呼ぶ等の対応マニュアルを作成する等の対策をとるべきであろう。
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