騒音トラブルにおける考慮事項と賃貸人及び管理会社の態様
2015/07/08 不動産法務, 民法・商法, 住宅・不動産

1概要
マンションやアパートでの、住人同士や近隣住民との騒音トラブルは、近隣環境紛争において最も苦情件数の多いものとされている。中には騒音問題が改善されないことに憤慨して、園児の保護者を刃物で脅迫した男が逮捕されるといった物騒なケースまで生じている。このような問題は不動産管理会社や賃貸人にとっては避けては通れないものとなっている。そこで、近隣の騒音問題について、法律的な視点から説明する。
2受任限度及びその判断
騒音は人の感じ方によってまちまちと思われる。しかし、裁判所は、一定の基準を以て騒音の判断を客観化している。具体的には、「受忍限度、すなわち、一般人が我慢しうる最大限度の騒音や振動の被害を超えているか否か」を検討の上、責任の有無を判断し、受忍限度を超えた場合、不法行為者に損害賠償請求(709条)を命じている。
そして、その判断要素としては、騒音の程度、騒音による不利益の程度、騒音発生とその継続の経緯、実施された騒音防止措置などを考慮しており、事案に即し受忍限度の判断をしている。東京地裁平成24年3月15日判決では、幼児が毎晩遅くまで室内を走り回ったり、椅子から飛び降りたりする等の騒音を生じさせたために不快に思った階下の住民が訴えたケースにおいて、騒音計による測定の結果、午後9時~午前7時までの時間帯で40デシペル超、午前7時~午後9時で53デシペルを超えていたことを理由に慰謝料・治療費・騒音の測定費、および遅延損害金の支払いを子供の親に命じている。
また、環境省では環境基本法という法律に基づいて、騒音による環境上の条件について、生活環境を保全し、人の健康の保護を目的として維持されることが望ましい基準を設けている(環境基本法16条1項)。それによると、住宅地では、昼間(午前6時~午後10時)が55デシペル以下、夜間(午後10時~翌日の午前6時)が45デシペル以下という基準が設けられており、上述の基準が騒音判断の指標となると思われる。
3コメント
賃貸人や管理会社は、建物賃貸する場合に使用細則を定めている場合が多く、賃借人に迷惑行為を防止するように注意をしたり、管理規約等による種々の責任を追及できる地位にあるといえる。そのため、苦情を申し出た者と協議しつつ、できる範囲で対応を行う必要があるといえる。その際には、対応方法について受忍限度等を基準に被害の程度をふまえ最大限の配慮をしなければならない。
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