法務担当者と弁護士資格
2015/05/18 法務採用, 民法・商法, その他

企業内弁護士の増加
2015年の司法試験が昨日終了した。法曹人口の増加に伴い、企業内で働く弁護士の数も増えている。日本組織内弁護士協会の調べによれば、2014年12月末時点で、企業内弁護士数は1307人。同協会で統計の出ている2001年の66人から1000人以上増加している。
今年の試験に合格する人のなかにも、企業就職を目指す方は多そうだ。弁護士資格を取得した人は、法律事務所で働くというイメージが強いが、弁護士は個人事業主という性格が強いので、仕事の安定性や労働時間、休日休暇、福利厚生などの点を重視すれば、企業内で働いた方がよいといえる。
また、社内の事業全体に深くコミットし、ビジネスに参画すことに魅力を感じ、法律事務所で企業法務に携わっていた弁護士が企業に転職する場合も多い。
企業が社内に弁護士を置く理由
理由として考えられるのは、訴訟への対応であろう。契約書のレビューや法律相談であれば、一般の法務部員でも対応可能であるが、裁判の代理人となると、弁護士に委任するということになるだろう。
訴訟案件の多い企業であれば、その都度、外部の弁護士に依頼するよりも、自社に弁護士を置いたほうが長期的にみれば、コスト面でもプラスが見込めるということもあるかもしれない。また、契約交渉の場などで弁護士資格を持っていれば、企業にとっても箔がつくということも考えられる。
法務担当者に資格は必要か
訴訟対応を除けば、弁護士資格がなくても、法務関連業務のほとんどを行うことが可能である。
もっとも、多角的に事業を展開している企業であれば、それぞれの事業分野に専門性を持っている有資格者を配置するという意義はあるかもしれない。上記、日本組織内弁護士協会調べによる、「企業内弁護士を多く抱える企業上位20社(2014年6月時点)」によれば、企業内弁護士の多い企業の順位は、ヤフー(18人)を筆頭に、三菱商事(17人)、三井住友銀行(13人)、伊藤忠商事(12人)と続いている。複数の事業領域を持つ総合商社や、債権関係、投資関係など弁護士のニーズが高いと思われる金融機関が上位に位置している。
しかし、これらは大規模で体力のある企業ばかりであり、ほとんどの企業では、弁護士資格を有している法務担当者が一人いるか、もしくはいないのが通常である。少なくとも、大部分の企業が現在のところ通常の法務部員で事足りている。
そもそも、法務担当者に必要な能力は、様々な考え方があるだろうが、法的観点を持ちつつも、他部署から仕事を適切に受け、他社の担当者と適切なやり取りをし、(一人法務でない限り)法務部内で、協力して仕事をしていくことが求められる。
そこに資格のあるなしは、関係なく、交渉力や指導力、そして人間力が必要である。
現在、法務業務に従事されている方や法務職を希望されている方の中にも、弁護士資格だけでなく他の資格を取得することを検討されている方もいると思うが、資格取得よりも、交渉力やマネジメント力、これから益々必要になってくると思われる英語力を身に付けたほうが、より現場のニーズに合致した法務担当者になれるのではないか。
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