司法取引導入!その影響は?
2015/03/17 法務相談一般, 刑事法, その他

今月13日、刑事司法改革の関連法案が国会に提出された。警察や検察の取り調べの録音・録画(可視化)を一部の事件で義務づけることを柱とするこの法案において、新たに司法取引が導入されることになるので、司法取引制度の導入が企業に及ぼす影響について少し考えてみたい。
司法取引
司法取引とは一般に刑事裁判において検察官が求刑を軽減する代わりに被告人に罪を認めさせることをいう。司法取引は欧米各国で広く採用され、難事件の解明に成果を挙げている。今回導入が検討されているのは、「捜査協力型」と呼ばれるもので、以下の二つの規程が導入される見通しである。
①証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度の創設
容疑者や被告人が検察官に他人の犯罪情報を提供し、見返りに起訴の見送りや求刑を軽くしたりすることを合意することができる制度。容疑者などと検察官の合意に加え、弁護人の同意が条件となっている。適用される犯罪は殺人などの重大事件を除いて、汚職や経済事件、薬物・銃器事件などに限定される。
②刑事免責制度の創設
共犯者や事情を知る人物の証人尋問をする場合、証人に不利な証言を本人の刑事責任追及の証拠として使わないという条件で証言させる刑事免責制度。
いずれの類型による司法取引においても、得をしたいがために他人の犯罪について虚偽供述をする恐れがあり、新たな冤罪を生む可能性が危惧されている。
企業への影響
司法取引の導入で企業側には「司法取引を行う」という選択肢が生まれた。しかし一方、この選択肢が生まれることで、社内において我先にと検察への情報提供競争が行われるのではないかという懸念が生じる。かつては自社への忠誠心が高い社員が多く存在したが、雇用の流動化に伴い、社内で検察への駆け込みを検討する社員も増えてくるであろう。
改正案にいう「被疑者」「被告人」は刑事訴法上、法人も含まれることから、企業が司法取引するとして、競合他社の犯罪情報を提供することも往々にして考えられる。今後、司法取引については取締役会で決定する企業が増えることが想定されるが、社員が会社に先を越されるのではないか、そのまた逆も然りで、疑心暗鬼になる可能性もありうる。
今回の司法取引導入により、企業法務の観点から上記事態に対応するために、如何に、事態や情報を素早く把握するかが鍵になる。各企業は社内通報制度などを整備することで、情報への感度を磨き、犯罪の芽を事前に摘み取ることが必要になってくる。一部の企業では既に会長や社長に直接メールを送れる社内通報制度を採用しているが、こうした整備を行うことで司法取引をしないで済むにこしたことはない。
また、企業と社員との関係を考えると、社内における就業規則に司法取引への協力で社内処分を軽減することを盛り込むことも検討の余地があるのではなかろうか。
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