特許訴訟の動向
2015/03/16   知財・ライセンス, 特許法, その他

事案の概要
 アルコール度数ゼロのビール風味飲料を巡り、自社の特許を侵害されたとして、サントリーホールディングスがアサヒビールに対し、アサヒの主力商品「ドライゼロ」の製造や販売の差し止めを求める訴訟を起こし、3月10日に第一回弁論が東京地裁で開かれた。
 サントリー側は、ビール風味の飲料であっても飲み応えが得られるよう、企業ノウハウを注ぎ込み、エキス分の総量、pH値、糖質を一定範囲に調整して実現し特許を取得したという。そのうえで、アサヒビールのノンアルコールビールである「ドライゼロ」を購入して分析したところ、特許の数値の範囲内にあることが判明したとしている。
 これに対し、アサヒ側は、特許のpH範囲はビール等の炭酸飲料としては通常の値であること、特許の内容は既成製品から容易に創作できるものであることを理由に、当該特許の無効を主張している。必要に応じて特許庁に当該特許の無効審判を求める方針を示している。
特許訴訟の動向
 日本で業界大手企業同士が特許侵害を巡り訴訟で争うケースは、米国に比べ少ない。2012年の日本における特許訴訟件数は187件と、米国の5千件以上に比してはるかに少ない。これは、原告の勝訴率が米国より低く、訴訟で特許が無効になることを恐れて交渉による解決を好むからであるとされている。
 もっとも、ここ数年は、今回の「ドライゼロ」を巡る訴訟に限らず、業界大手同士が特許訴訟で争うケースが目立つ。最近でも、日清食品ホールディングスが即席麺の製造技術に係る特許が侵害されたとしてサンヨー食品を提訴したケースでは、サンヨー食品は侵害を認め製法を変更し、1月に和解した。
 政府は、本年6月につくる知的財産推進計画にあたって、日本で特許訴訟を起こしやすいよう、原告の勝訴率向上に繋がる制度改正に取り掛かる方針である。具体的には、特許を侵害したとされる側が「正当な理由」がないのに証拠文書の提出を拒んだ場合の罰則の導入などを検討している。損害の立証に必要な証拠を収集しやすくすることで侵害された側の訴訟負担を軽減する狙いである。また、被害額の算定規定も見直し、損害賠償額の水準の底上げに繋げる方針である。
コメント
 企業は特許侵害されたときの賠償額を考慮し、特許権を出願する国を選ぶ傾向にあるため、現在の日本における低すぎる賠償額は、知的財産の海外流出の要因となり、日本の知的財産による成長戦略を阻害しているとされる。事実、日本の特許出願件数は減少傾向にあり、2013年は約32万8千件と、2005年に比べ約9万8千件減っている。
 今回の制度改正により、特許権の保護が強化されれば、知的財産を柱とする企業の成長戦略に資することとなる。
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 得重 貴史
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 登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
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