外国人労働者の労働問題について
2015/02/10   外国人雇用, 労働法全般, その他

事案の概要

 1月30日の厚生労働省の報道発表資料によると、外国人労働者の届出の状況は2014月10月におよそ80万人となり過去最多を記録しました。今後、少子高齢化による労働力不足や東京オリンピック開催決定の中で日本企業で就労する外国人労働者の数はさらに増加することは明白であります。そこで今回は、外国人労働者の労働問題、特に問題となる雇用の場面と賃金不払いについて取り上げてみたいと思います。

外国人の就労資格

 外国人は、 出入国管理及び難民認定法で定められている在留資格の範囲内において、わが国で就労することが認められています。例えば、itエンジニアや機械の設計技師などの技術職や中華料理のコックや介護福祉などの技能職をはじめ、大学の教授などの教育の分野や国際業務を行う企業の企業内転勤などが主な在留資格として挙げられます。
 一方で、旅行などの短期滞在では就労資格は認められません。アルバイトも地方管理局への届出がなければすることができませんが、これについては、パスポートで確認できます。
 また、永住者、配偶者が日本人または永住者である場合には、就労の制限はありません。
 このように、日本で働くことのできる外国人は就労資格のある者に限られているので、企業が外国人を雇用する場合には、パスポートや在留資格を証明する「在留カード」等により、就労が認められるかどうかをまず確認しなければなりません。なお、就労資格のない外国人を雇用・斡旋した事業主に対する罰則もあります。(入管法73条、3年以下の懲役または300万円以下の罰金)

外国人の採用に際して

 外国人を採用するにあたり労働条件を定めることとなりますが、外国人であっても日本国内で就労する場合には、労働基準法が適用されます。労働基準法第3条には、労働条件において国籍による差別を禁止しており、外国人であることのみを理由に賃金を低くするなどの差別は許されません。また、日本語が理解が不十分であることも少なくないことや、日本の生活・労働環境に慣れていないことなどから他の労働条件についても問題が起こりがちです。そのためにも、日本語を十分に理解できない外国人労働者に対して、日本語の雇用契約書とともにその外国人が理解できる言語に翻訳した雇用契約書も用意しておくなど、外国人に労働条件や関係法規を理解させるための企業側の努力が必要です。具体的に問題となりやすい欠勤や早退の際の賃金カットや解雇事由は雇用契約書(労働条件通知書)に明示しておくと良いと思われます。

外国人就労者の解雇について

 解雇は、企業側がいつでも自由に行えるというものではなく、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、労働者を解雇することはできません(労働契約法第16条)。解雇するには、社会の常識に照らして納得できる理由が必要です。 これは前述の通り外国人就労者にも適用されます。
 ここで、最も大きな問題となるのが不法就労の際の企業側の対応です。
 まず事前の対策として、雇用契約の締結の際に在留資格を証明するパスポートや「在留カード」の確認を求め、これを複写して雇用契約書と一緒に保管しておくことが考えられます。また、雇用契約書の解雇事由に在留資格の欠損を明示しておくことも、後に不法就労が発覚したときに企業側の対応が明確になります。逆に、不法就労について企業側に責任がある場合は(例えば、在留資格と実際に担当させる業務の不一致など)、解決金で不法就労者を退職させるという手段をとることが考えられます。

外国人への賃金不払い

 まず、雇用契約書(労働条件通知書)において提示された賃金額よりも下回る賃金しか支払っていなかった場合、不法行為となり労働基準監督署へ通報・検査の対象となる可能性があります。
 次に、最低賃金制度は外国人就労者にも労働基準法と同様に適用があり、それを下回った額を雇用契約書で定めていた場合にも最低賃金を支払う義務は生じますので、都道府県で公示されている最低賃金額を確認しておく必要があります。また、労働時間外の賃金の不払いも日本人以上によく問題になります。
 これら日本人との格差や差別的取り扱いの問題の根底にあるのは、外国人労働者を安価な労働力としてだけ捉えている企業側の認識にあるのではないのでしょうか。勤務の年数や仕事の能力から労働条件を区別することは許されますが、国籍を理由に労働条件を差別することは許されません。(労働基準法3条)

コメント

 少子高齢化による労働力不足や東京オリンピック開催決定により外国人労働者が増加し、これまで以上の問題が生じることが予想されます。初めて外国人の採用を考えている企業や今後外国人の採用を積極的に行う方針の企業は、この機会に外国人の受け入れ体制について考えてみてはいかがでしょうか。

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