法務・厚労両省 外国人技能実習制度 見直し
2015/02/03   外国人雇用, 労働法全般, その他

事案の概要

法務省及び厚生労働省は1月30日、発展途上国から外国人を日本国内に受け入れ働きながら技術を学習してもらう外国人技能実習制度の見直し案を発表した。受け入れ企業や仲介業者の不正防止対策の強化、対象職種の拡大、受け入れ期間の延長を目指す。

現行の外国人技能実習制度

外国人技能実習制度とは、発展途上国の人材育成や技術発展への貢献を目的に、3年間を上限に外国人を実習生として受け入れる制度である。現在、約15万人が製造業などに従事している。
本制度は、途上国支援を建前としながら、人手不足の産業を支える事実上の労働力確保策となっているというのが現状である。本制度を悪用し、過重労働や安全配慮義務違反、法定労働時間の超過、時間外労働への割増賃金不払い等、実習生に対し違法な待遇を強いる例が後を絶たない。2013年の立ち入り調査では、対象となった2318事業所の79.6%に当たる1844事業所に、何らかの労働基準関係法令違反が厚生労働省により確認されている。このような状況にも拘わらず、受け入れ先に指導や助言をしている公益財団法人である国際研修協力機構には、違反是正を求める法的権限がない。

今回の見直し案

法務省と厚生労働省が設置した有識者懇談会の報告書は、国から委託を受けた法的権限を持つ新たな監督機関を設置し、抜き打ち検査の導入などで指導を強化するよう求めた。また、不正に対する罰則を設け、携帯電話の所持禁止や外泊制限などの人権侵害行為に対しては、刑事罰適用も視野に法整備を進めることも盛り込んだ。また、日本の仲介団体を許可制とし、不正があった場合は、許可取り消し・事業者名の公表をすることや、送り出す国との間でも協定を結び、実習生から保証金などの名目で不当な金銭を徴収する悪質な業者を排除することを提言している。
一方で、法令遵守などを条件に、3年の実習を終えて一時帰国した後、再来日して2年程度の再実習を可能とし、介護職などへの実習生受け入れ枠の拡大も求めている。
政府は今国会に、上述の拡充案を盛り込んだ関連法案を提出し、来年度中に新制度へ移行することを目指している。

コメント

途上国支援の建前の下、実習生が現実として日本国内の労働力不足を補っているのは紛れもない事実であり、今回の拡充方針も、国内の深刻な労働力不足を受けてのものである。政府は昨年4月、5年後の東京五輪に向け、インフラ整備のために技能実習制度を活用する緊急措置を決めている。
労働力が必要ならば、実習生としてではなく、正規に労働者として外国人を受け入れ、労使対等の問題として検討すべきではないかとの批判もある。しかし、ブラック企業が蔓延し国内の正規社員の待遇改善すら覚束ない現状にあっては、仮に正規労働者として受け入れたからといって、実習生の待遇の根本的な改善に資するのかは疑わしい。
国から委託を受けた機関による監視制度や罰則の強化には、実習生の待遇改善につき一定の効果が見込まれるものの、国内社員の待遇問題と同様、まずは各企業の法務・人事など管理部門による一層の不正防止活動の強化及び労働環境の整備が望まれる。

関連サイト

日本経済新聞

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