介護休業 分割取得が可能に 2017年施行予定
2015/01/09   労務法務, 労働法全般, その他

事案の概要

 厚生労働省は、現在家族1人につき原則1回の取得に限っている介護休業を、分割して取得できるようにするという介護休業制度拡充方針を発表した。これは、仕事と介護の両立に適した環境を整備し、管理職など企業の中核となる40~50歳代の人材の、介護を原因とする離職を防止することを狙いとするものである。厚生労働省は、今年6月までに拡充案をまとめ、2016年に育児・介護休業法を改正し、2017年に施行することを目指している。

介護休業制度とは

 会社員が、家族を介護するために長期の休みを取りながら、一定の給付を受ける公的な制度である(育児・介護休業法2条2項)。会社に申請して、家族1人につき最長93日間の取得が可能である。休業期間中は、介護休業給付として賃金の40%相当額の金銭を受け取ることができる。対象となる家族は、配偶者(事実婚関係の者を含む)、父母及び子、配偶者の父母、同居かつ扶養している祖父母・兄弟姉妹・孫である。
 なお、介護休業と類似の制度に、介護休暇がある。これは、介護休業と異なり、対象家族が1人であれば年に5日まで、2人以上であれば年に10日まで、1日単位で取得できる短期の休暇である(育児・介護休業法16条の5)。要介護家族の通院の付添い、介護サービスの提供を受けるための手続きの代行等、介護だけでなく、その他の必要な世話をするために休むことも含まれている。介護休業と異なり、休暇期間中の給付はなされない。

改正がなされた場合の介護休業制度

●休業期間について
 現在は家族1人につき最長93日の休みを取得できるが、原則1回のみの取得に限られる。1回の取得では対応しきれず、介護休業のほか有給休暇でやり繰りする人が多いのが現状である。これが今回の改正では、最長93日の休みを2~3回に分けて取得できるようになる。もっとも、企業の雇用管理が複雑になるのを防ぐため、1回の取得で休める期間は2週間以上を目安にすると見られる。

●所得補償について
 現在、賃金の40%相当額を介護休業給付として受け取ることができる。この点については、今回の改正での変更はない。

●財源について
 給付費に充てられる財源は、2013年度で19億円となっており、うち国費が1億円、雇用保険料が約18億円となっている。この点について、改正後は、現行の財源に加え、現在約6兆円ある雇用保険の積立金を用いて対応する見込みである。

●利用者について
 制度利用者は2012年時点で7万6千人であり、これは、介護をしながら働いている人の3%である。改正後は、40~50代の管理職世代を中心に利用を増やし、年間約10万人に上る介護離職者を少なくする狙いである。

コメント

 現在、介護を原因とした離職は多い。加えて、身内の窮状を他人に知られたくないという思いや、職場に迷惑をかけたくないという思いから、本当の理由を明かさずに離職する人の存在も想定される。
介護は、多くの場合経済的・時間的・体力的・精神的に多大な負担をもたらすため、要介護者を抱える会社員は、今後仕事を継続すべきか否かの岐路に立たされる。しかし、特に介護が必要な親を抱える40~50代は、企業内で管理職など重要なポストについている人が多く、急な離職により業務に支障をきたすことが想定される。また、介護に専念するために離職したとしても、40~50代の人の復職や再就職は困難とされる。
 今回の改正により介護休業の分割取得が可能になれば、会社員は介護に対応しやすくなり、より離職をしなくて済む環境を整備することが可能になると思われる。今後、少子高齢化、老老介護、老人介護施設の不足等の問題のますますの深刻化が予想されている今、介護に関する企業法制度の一層の拡充が求められている。

関連サイト

日本経済新聞

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