カネボウ訴訟。被害を最小限に食い止める体制作りとは
2014/12/02   消費者取引関連法務, 民法・商法, メーカー

事案の概要

カネボウ化粧品の白斑被害問題で、12月1日、関西で初めての集団訴訟が提起された。
これは、2008~13年にカネボウが販売した美白成分「ロドデノール」を含む化粧水や乳液を使用したことによって、首や顔、手がまだらに白くなる白斑が生じたことに起因する訴訟である。
 カネボウに消費者から白抜け症状がでたとの最初の相談があったのは2011年10月。そして2012年には消費者から約10件の同様の相談、社内でも1件の情報提供があった。特に同年9月には大学病院の医師から、「発症部位が化粧品使用部位と一致していることから、ロドネノールが白斑発生の引き金となった可能性がある」との意見を聞いている。しかし、その時点でも具体的な調査をせず、2013年5月に別の医師からのメールをきっかけに社内で独自に医師の所見を求め、同年7月になってようやく自主回収を発表した。
 2011年の最初の通報から自主回収までの期間が長すぎ、その間にも被害が拡大してしまった。

なぜエコーシステムが機能しなかったのか

 この問題を調査している第三者委員会は、問題の認識が遅れた原因について、カネボウ化粧品が親会社の花王と共有している消費者対応システム「エコーシステム」の運用に問題があったと指摘した。
 エコーシステムとは、消費者から寄せられた相談内容をデータベース化し、全社で閲覧・共有できるようにした情報一元化システムである。
 カネボウでは、消費者からの相談内容を「問い合わせ」と「身体トラブル(スキントラブル)」に分けた上でエコーシステムに入力していた。その際には相談を受けた窓口担当者の判断で「身体トラブル(スキントラブル)」に該当しないとした場合には「問い合わせ」として入力し、品質管理や安全管理の担当部署はその内容をチェックしないという運用がなされていた。
 そのため、消費者から提供された白斑に関する情報の大部分は「エコーシステム」に蓄積されていたが、一般的な「問い合わせ」事例として見過ごされていたのである。

現場の「思い込み」で済ませてはいけない

 この問題に対し、第三者委員会は報告書で対応が遅れた原因の1つとして、相談窓口担当者の「白斑は化粧品と無関係の病気であるという思い込み」を挙げている。
 しかし、リスク管理という観点からみると、エコーシステムに「身体トラブル」と入力するのか「問い合わせ」と入力するのかの振り分けの際、窓口担当者に「化粧品が原因の症状なのか」まで判断させていたことに問題があったように思われる。
 化粧品は肌に直接使用する分、その安全性の確保が非常に重要である。そうであるならば、技術者ではない窓口担当者に症状と化粧品との因果関係を判断させず、肌トラブル事例はすべて「身体トラブル」へ集積しておけば、早期発見につながったのではないか。
 問題を早期に発見するための効率性と問題を取りこぼさないための確実性のバランスは非常に難しいが、今回の事件でいうならば、被害を最小限に食い止めるには、そもそも現場の思い込みが健康被害の発見に影響しないような構造を作ることが求められていたように思われる。

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