労働派遣法改正へ 改正の要点
2014/09/30 労務法務, 法改正対応, 労働者派遣法, 法改正, その他

改正案の提出
政府は2014年9月29日、労働者派遣法の改正案を提出した。先の通常国会にも同内容の法案が提出されていたが、誤表記があったことから廃案となっている。今国会中に成立した場合2015年4月1日に施行される予定である。
派遣業を全て許可制に変更
現行法では特定労働者派遣事業(派遣労働者が正社員のみの場合の派遣事業)を行う際には届出をするだけでよく、一般労働者派遣事業(派遣労働者の中に正社員でない者がいる派遣事業)を行う際には許可が必要であった。
改正案では特定労働者派遣事業と一般労働者派遣事業の区別を廃止し、全ての労働者派遣事業を許可制とする。これは後述の雇用安定義務を派遣元に課すことから、その義務を果たせる能力があるか審査する為と思われる。
労働者派遣の期間制限
現行法ではソフトウェア開発、秘書など専門性が求められる26種類の業務については期間の定めがなく派遣を行うことが出来る。それ以外の派遣については、労働者個人と事業所の双方に原則1年、一定の条件を満たすと3年の期間制限がかかる。
これに対して改正法では全ての労働者派遣事業に労働者個人・事業所の双方に3年の期間制限を設ける。もっとも事業所の期間制限については過半数労働組合の意見聴取を条件に、期間制限を3年延長することが出来る。(再延長可能)
要するに従来は3年以上経過すると一旦派遣にやめてもらう必要があったが、改正法では労働者を変更さえすれば恒常的に派遣労働者を使用できる。
その代わりに派遣元は期間制限の上限に達する派遣労働者が、引き続き就業を希望する場合には新たな派遣先の紹介等の雇用の安定を図る義務を設ける。
改正の理由としては専門性が求められる26種類の業務とそれ以外で取扱いが異なることは分かりにくく、これを分かりやすくすることで契約内容の明確化を図ることであるとされる。しかし派遣労働者を恒常的に使用したい経済界の要請に考慮した結果であると推測される。
問題点
まず現行法では無期限の派遣を行うことが出来た26種類の業務を行う派遣労働者は、この改正により3年間で仕事をやめる必要が生じてしまう。これによりこの労働者の雇用が不安定になると考えられる。代替措置として派遣元は期間制限の上限に達する派遣労働者が、引き続き就業を希望する場合には新たな派遣先の紹介等の雇用の安定を図る義務を設けているが、実効性は不明である。2009年にはリーマンショックにより急激に景気後退が起こり、多くの派遣労働者が契約を打ち切られ路頭に迷うことになった。このようなことが再び起こらないように関係各所は注視していく必要性がある。
次の問題点としては3年ごとに労働者を入れ替えれば恒常的に企業が派遣労働者を使用できることである。従来派遣労働は根本原則に常用代替防止(正社員の代わりに派遣労働者を使用すること)がある。期間制限はそのために設けられたものであろう。この改正により恒常的に労働者を使用できるようになることから、正社員の代替として使用することが出来常用代替防止の理念は失われる。
派遣労働者の人数は増加傾向にあり、国民にとっての重要性は増している。その根拠法規たる労働者派遣法の根本原則の変更には国民的議論・理解が必要であるが、それが行われているとはいえない。今後国会の議論を通じて国民的議論が喚起され理解が進むことが期待される。
事案の概要
関連リンク
厚生労働省 第187回国会(臨時会)提出法律案
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