サイバー防衛の整備に、3つの課題
2014/09/01 コンプライアンス, 情報セキュリティ, 民法・商法, その他
サイバー対策の3つの課題
民間企業や政府機関へのサイバー攻撃を防ぐため、今秋の臨時国会でサイバーセキュリティー基本法が成立見通しとなった。政府はその基本法に基づき具体的な関連法の整備をすることとなる。関連法案を迅速に行うため、3つの課題が考えられる。
①企業側にセキュリティー対策を義務付けることである。現在内閣官房情報セキュリティーセンターでは、石油や化学産業、金融業など13分野を重要インフラ事業者と指定している。また、サイバー被害を受けた場合には、国に報告することとなっている。しかし、その報告は、任意であり、対策が義務づけられてない。また、法律制定には、国会での審議があるため、時間がかかり、法律が制定するころには法律の求める技術対策は最低限の対策とならない。したがって、企業に最低限の対策を法律で義務付けることは実現困難であると考えられる。
②プロバイダーが、顧客のサイトを監視することである。他人のパソコンにウィルスを添付させたメールを送りつけて、他人のパソコンを遠隔操作して企業の情報を盗み出すサイバー攻撃が増えている。そこで、プロバイダーの顧客が危険なサイトを閲覧していることをプロバイダーが検知した場合、プロバイダーが顧客に危険なサイトであると通知する対策が考えられる。しかし、現在、プロバイダーが顧客の閲覧している内容を確認することは、禁止されている(電気通信事業法3条、4条)。したがって、プロバイダーが顧客の閲覧内容を把握するには、電気通信事業法の改正が必要と考えられる。また、プロバイダーが顧客の閲覧内容を監視することは、顧客のプライバシーの自由を侵害すると考えられ、プロバイダーの監視対策を慎重に行う必要がある。
③ネット犯罪の規制である。ネット犯罪を防止するためには、刑法で規制する必要がある。しかし、幅広く刑法で規制するとなると、規制対象が広くなり、インターネット上のどのような行為が犯罪行為となるかが不透明となり、インターネットの便利さが阻害されてしまう。そこで、政府は、刑法で規制する行為を具体的に定める必要がある。また、平成23年に制定された情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律制定段階において、国民の思想良心の自由(憲法19条)や表現の自由(憲法21条1項)を不当に制約するものであるとの批判があり、新たな刑法上の規制を加えるとなると、同様の批判が出ると考えられるので、政府には、慎重な対応が求められる。
関連サイト
資料2-内閣情報セキュリティセンター
通信の秘密(憲法21条2項後段)
電気通信事業法
不正指令電磁的記録作成罪(刑法168条の2第1項)、不正指令電磁的記録供用罪(刑法168条の2第2項・第3項)
いわゆるサイバー刑法に関するQ&A
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