【特許法】特許異議申立て制度創設へ 特許法改正
2014/08/19 知財・ライセンス, 特許法, その他
事案の概要
平成26年5月14日に公布された「特許法等の一部を改正する法律案」における改正の一つとして、特許異議申立制度が創設されることとなった。これにより、無効原因を発見した特許を争う方法としては、特許掲載公報発行の日から6月以内であれば特許異議申立制度を利用し、6月経過後は特許無効審判制度を利用することによりその無効を争うこととなる。
旧法における特許異議申立制度
旧法における特許異議申立制度は、一旦意義を申し立てた後は特許庁と特許権者との間だけで手続が進行し、請求人が審理中に意見を申し立てる機会が存在しなかったため、当事者の納得、審理の充実の観点から不十分であった。また、特許無効審判という特許権の有効性を争う別の手続が存在するところ、これは異議申立とともに当事者の紛争解決のために用いられており、両者が特許庁に係属することにより、紛争の最終的解決が遅れることという問題も存在した。このため、特許無効審判制度に統合される形で、平成15年の一部改正により一旦廃止された制度である。
現行法の特許無効審判制度の問題点
しかし、この特許無効審判制度に対して特許権者側からは、特許無効審判がいつでも誰でも請求できたことにより、いつ、誰から無効の主張を受けるかわからない期間が半永久的に続くこととなり、権利の不安定化につながる側面があったため、権利の早期安定化が求められていた。また、利用者側からは、口頭審理を原則とすることに対しては手続きの負担が大きいこと、当事者対立構造をとることに対しては、特許権者との関係が悪化したり、特許権と自己の技術・商品との関係を詮索されるリスクが指摘されていた。
今回の改正後の両制度の扱い
今回の改正では、これらの問題に対応するため、特許掲載公報発行の日から6月以内に限り、書面審査による審理が可能な手続きとして特許異議の申立て制度を創設した。さらに、旧制度で問題となっていた審理中の請求人からの意見申立の機会について、意見書提出の機会を与えることとした。
また、特許無効審判制度は、異議申立期間を経過した後、当事者が参加する口頭審理により特許の有効性を争うより確実な手段として存続させる一方で、審判を請求できる者を利害関係人のみに限ることとした。
コメント
本件改正は、特許権者にとっては異議申立期間を経過した権利については有効なものとして利用できる点で権利の安定化につながり、特許の有効性を争う側からは、書面審査を原則とする簡易・迅速な手続として異議申立制度を利用できる点で有益である。
一方、簡易・迅速な異議申立に対して、無効審判制度は原則いつでも請求でき、口頭審理による確実な解決を図ることができる利点があるものの、審判を請求できる者を利害関係人に限定することとしていることから、利害関係の存否についての争いが問題となる可能性がある。特許の有効性を争う場合は両制度の請求可能期間、手続の進行の違い等を把握して、適切な利用をすることが求められる。
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