【まんだらけ】万引きに対する企業の対抗策
2014/08/14 コンプライアンス, 危機管理, 民法・商法, 個人情報保護法, 刑事法, その他

事実の概要
商品を万引きした犯人につき、返品しない場合は防犯カメラに映った顔をHP上で公開するとしていた古物商「まんだらけ」が画像の公開を取りやめた。「法令遵守を基本とした上で警察の捜査に協力する立場をとらせて頂くことと、 期日である12日 (火) の夜になりますと、報道陣の方々が店舗のあるビルの入り口付近や店舗周りに集まって来られていて、とても犯人が入って来られる状況にはなかった」(まんだらけHPより)ことから取りやめ、今後は警察の捜査に任せる方針であるという。
今回の騒動の始まりは8月4日午後5時ごろ「まんだらけ」中野店4階で、ゼンマイで動くブリキ製の玩具「鉄人28号」(価格25万円)が盗まれた。警視庁中野署に被害届や防犯カメラの写真を提出した。その後5日の正午に防犯カメラに映った男の顔にモザイクをかけた状態でHP上に掲載し、1週間以内(12日まで)に返さないとモザイクを外して公開すると警告をした。これに対しネット、テレビ、ニュースにおいて話題となり、その後中野警察署から公開しないよう要請されたため、13日午前0時過ぎ公開を中止した。
コメント
全国における万引きの被害額は全国的に見た万引きによる被害額は4,615億円※(1日あたり12.6億円)と推定すると発表される(全国万引犯罪防止機構調べ)。小さな書店等にとっては万引きの被害は売り上げに大きく影響する致命的なものである。これに対し事業者も色々な対抗策としてEAS(万引き防止システム)や監視カメラ等を設置することにより万引きの防止をしているもののいまだ万引きは減らないようだ。
万引きによる被害は企業にとっても大きな問題である。「まんだらけ」は万引きに対して対策を講じた結果犯人の顔写真公開に踏み切ったが、当該行為は警察の捜査に支障が出るため取りやめた。しかし、顔写真の公開にはそれ以外にも名誉棄損罪(230条1項)や脅迫罪(222条)に該当する可能性があり、そのうえ肖像権違反として不法行為責任を追及され損害賠償請求をされるおそれがある。
防犯カメラに映った顔写真はモザイクがかかった状態で個人の識別が不可能な状態ならば肖像権侵害になるおそれはないが、公開することは上述のような問題が生ずる。今回の「まんだらけ」の行為は適当なものではなかったが、自主的防衛策の一つとして一定の評価はできる。小さな店などにおいては高度な防犯機器を設置することや、専門の人間を雇うことは費用面から難しい。そのため店ごとに今回のような顔写真公開や、他店との万引き犯の顔写真データの共有等、独自の対策を講じているところも多いだろう。しかしその方法によっては逆に店側が違法になるおそれがある(顔写真データ共有は個人情報保護法違反のおそれ)。当該策が刑事上、民事上問題がないか確認したうえで策を講じることがより安全で効果的なものになるだろう。
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