緊急時の港湾機能喪失を防げ~改正港湾法について~
2014/06/19 法改正対応, 法改正, その他

概要
震災が発生して産業用並びに生活用物資が欠乏した際、大量輸送を支える最寄の港湾機能の復旧が遅れれば経済的な大打撃は避けられない。首都直下地震等の発生時には、三大湾(東京湾・大阪湾・伊勢湾)において大きな被害が出ることも予想される。こうした事態に対処すべく、今国会では東日本大震災を教訓として港湾機能の被害へ対処するための様々な措置を盛り込んだ改正港湾法が昨年成立した。この改正では産業競争力を強化すべく海上運送の効率化を狙った制度も創設され、緊急時対処と産業政策の二本柱の内容となっている。今回はこれら港湾に関する改正を確認したい。
所有者の承諾なくても復旧急げ
これまで港湾内に所有者が存在する物が漂流している場合については、一々承諾を得ねば除去が難しい状況にあった。本改正では非常災害時に国土交通大臣が所有者の承諾なしで漂流物を除去できる「緊急確保航路」を指定できるようになり、漂流物の為に港湾に船舶が出入りできないという状況をいち早く打開できる制度が整えられた。また、開発保全航路(※1)が船舶の退避場所にも拡大され、緊急時に大型船舶が停泊できる場所が整備されることになる。
これらに加え港湾管理者(地方自治体など)が港湾施設を管理する民間事業者へ、港湾施設の維持・管理状況について報告を求め、立入検査を実施し、必要に応じ勧告・命令をできるようにする制度が設けられた。さらに災害時に港湾機能を維持するための広域的な協議会も設置されることになる。
一括大量輸送で効率化へ
これまで石炭等のばら積み貨物(※2)は、個々の企業がそれぞれ独自に輸入していたために輸送コストがかさみ非効率的な状況にあった。本改正では産業競争力の強化を目指し、ばら積み貨物を各企業が拠点となる港に共同で一括大量輸送できるように、各企業の輸送網を共同化・効率化するための制度が導入された。
具体的には、輸入拠点機能を高める港湾を指定する制度が新設された。そうして指定された港湾の港湾管理者は、策定したばら積み貨物の海上運送の共同化のために計画を策定することが定められ、計画に従って関係施設所有者等と連携しながら荷さばき施設等の共同輸入に必要な整備・管理を促進する協定制度の創設も定められている。
※1開発保全航路:船舶の交通を確保するため開発及び保全に関する工事を必要とする航路のこと。今回は船舶の交通のためだけでなく、非常時の船舶退避場所として泊地を整備する区画も定められたことになる。
※2ばら積み貨物:包装されない状態で大量に輸送される貨物のこと。くず鉄、鉄鉱石などコンテナ船で輸送しないものである。各々の貨物ごとに特化した輸送用船舶になっていることが多い。
コメント
震災時に早期に港湾などの輸送設備を復旧することは、東日本大震災で仙台空港が米軍により復旧してから非常にスムーズに物資搬入が行えたことを考えると、産業上の経済的打撃のみならず被災者への物資供給の観点からも重要である。たしかに所有者承諾なしの船舶の除去は、所有権を一定程度制限することにはなるが、災害時に災害対策基本法で緊急通行車両以外の車両の通行が禁止される自家用車の例などを考えると、本改正は妥当な範囲での制限というべきであろう。
またばら積み貨物に関する改正も、一括大量輸送と効率的な輸送網が実現できれば、これまで個別に輸送して余計にかかっていたコストが解消出来る事になるので、個々の企業にも利益があると思われる。今後は改正法で示された諸設備所有者等との協定が円滑に定められていくことに期待したい。
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