カプコンの株主総会で買収防衛策が否決
2014/06/17 商事法務, 戦略法務, 会社法, その他

事案の概要
6月16日に行われた株式会社カプコンの株主総会において、敵対的な買収の防衛策を継続する議案が否決された。
同社では2008年に買収防衛策が導入され、買収防衛策の継続につき2年ごとに株主総会で決議しているが、今回は2008年の導入後、初めて否決されたことになる。
同社は議決権の20%を超える敵対的な買収提案があった場合、独立委員会が防衛策の発動を検討。独立委員会が妥当と判断した場合には、既存株主に新株を割り当てることで、敵対的買収を仕掛けてきた企業の持ち株比率を下げるという対抗策を講じるとされていた。
しかし買収防衛策は16日で期限が切れることから、17日以降は敵対的買収を仕掛けられた場合に、既存株主に対して新株を発行するなどの買収防衛策を採ることができなくなる。
株価が低迷していた時期に敵対的買収が相次ぎ、買収防衛策を導入する企業が増加した。しかし大和総研によると、買収防衛策を導入している上場企業は2008年に574社を記録しているが、以降は減少が続き、最近は510社前後まで減少しているとのこと。
廃止する理由として、例えば企業結合等により株主構成が変わり、買収防衛策を継続する必要がなくなったことが多く挙げられている。
環境が変化し必要性がなくなったという理由がないにもかかわらず、継続案が否決されることは珍しいが、今回のカプコンの事例では、外国人投資家比率が議決権ベースで約45%と非常に高くなっているという事情がある。
外国人投資家の間では、買収防衛策を導入することは経営陣が保守的であると捉えられたり、企業価値の向上につながる買収提案が拒否されるリスクも懸念されることから、導入は不要と考える傾向が強い。
同社の2012年の総会では賛成58.92%で可決されたが、2年前より外国人株主の比率が10%以上増えていることが、今回の否決につながったと考えられる。
コメント
日本では敵対的買収から企業を守るため、企業による買収防衛策の導入に肯定的な株主も多い。しかし買収は企業価値の向上につながる場合もあり、投資家の利益に資することもある。そのため、主に外国人投資家からは買収防衛策は不要と考えられている。従って外国人投資家の比率が高い企業では、今後も買収防衛策が否決されるケースが想定される。もちろん、敵対的買収が行われた場合の対応方法は準備する必要があるが、買収防衛策を廃止することで株価が上昇し、会社の利益に資するケースもあることから、事前に買収防衛策を廃止し、他の防衛手段を講じることも考えられよう。例えばコーポレート・ガバナンス体制の強化により、第三者視点からも経営をチェックできる体制を構築することで、適切な防衛策を講じやすくなる。また資金を効率的に運用し企業価値の向上に努め続けることが、株主の経営陣に対する信頼を獲得することにつながり、ひいては買収を防止することにも資すると言える。このように、今後は買収防衛策による手続的観点だけに頼るのではなく、より実質的な観点からの対策も検討する必要がある。
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