東芝の情報流出事件で改めて考える、企業の情報漏洩対策
2014/03/24 コンプライアンス, 情報セキュリティ, 不正競争防止法, メーカー

東芝の研究データが提携先企業の元従業員により、韓国企業に流出した事件が大きな問題となっている
一般的な情報流出の経路については①自社の従業員からの流出②取引先からの流出③外部からの不正アクセス等による流出が考えられる。企業が法的に取りうる対策は①、②に対してということになる。
技術的な情報であれば特許化によって保護する方法もあるが、情報開示の観点からこの方法をとらない企業もある。そこで本稿では、企業内での法的な情報流出対策として考えられる不正競争防止法上の保護対象としての情報管理と秘密保持契約での情報流出対策について見てみたい。
【不正競争防止法】
企業情報が不正競争防止法上の「営業秘密」に該当すれば同法上の保護の対象となり、営業秘密を不正に取得、使用、開示された場合には損害賠償請求のほか、一般の不法行為では認められない侵害行為の差し止めや、信頼回復措置を求めることが出来る。不正競争防止法上の「営業秘密」に該当するかは以下の3つの要件で判断される。(同法2条6項)
①事業者によって秘密として管理されている(秘密管理性)
②事業活動に有用な情報であること(有用性)
③公然と知られていないこと(非公知性)
このうち①の秘密管理性の要件を満たす為には、企業内において情報管理体制を構築しておく必要がある。例えば、情報にアクセスできる者の限定、文書管理規定の作成等が必要となる。さらに秘密管理性が認められるためには、情報にアクセスする者がその情報が秘密であると客観的に認識できる状態が必要とされる。
【秘密保持契約】
上述のように、不正競争防止法の保護の対象となるのは「営業秘密」であり、その要件を満たさない場合に備えて、従業員や委託先との間で差止請求の条項を入れた秘密保持契約を締結しておくことが有用となる。
また秘密保持契約を締結していない場合は不正競争防止法上の「営業秘密」に該当しないと認定される可能性が高くなるため、その意味でも秘密保持契約を締結しておくことは重要となる。以下、秘密保持契約を結ぶ上で重要と思われる点を挙げる。
①従業員との関係
従業員に対しては、就業規則や入社時の誓約書で守秘義務を負わせている場合が多い。しかし就業規則や誓約書上での、秘密となる情報や守秘義務の範囲の規定は抽象的でありその範囲が不明確になりやすい。そこで、その従業員が携わるプロジェクトや所属部署ごとに、別途個別に秘密保持契約を締結し秘密情報や守秘義務の範囲を明確化することが有用である。
また競業避止契約を結び、退職後一定期間同業他社に就職しないことを誓約させる場合もある。
②取引先との関係
情報漏洩を防ぐには、秘密情報を開示する対象者を取引先従業員のうち、当該業務を遂行する従業員のみにするなど、開示対象者を最小限に限定することが重要である。
また取引先とその従業員の間で秘密保持契約を結んでもらうなど、取引先に秘密管理体制を整えてもらうことも有用である。
さらに、特に秘密性の高い情報を開示する場合には、秘密情報の複製を禁止しておくことも有用である。複製を許容する場合には複製物の適切な管理や、複製物を含めた秘密情報の返還規定を設けておくことが重要である。
また秘密情報を基にした競業や特許出願の禁止を定めておくことも重要となる。
関連サイト
また近時政府は企業の秘密漏洩に関する厳罰化を検討している(2014年2月19日法務ニュース)
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