通算5年の無期転換ルール、例外を設ける特別法案提出へ
2014/02/26 労務法務, 労働法全般, その他

厚生労働省の労働政策審議会は、2月20日、厚生労働大臣に対し、有期労働契約の無期転換ルールの特例を設けることなどを内容とした「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法案要綱」について、「おおむね妥当」との答申を行った。
政府は、この答申を踏まえて、労働契約法18条の特例を定める法案を作成し、今通常国会でその成立を図り、来年4月からの施行を目指すとしている。
昨年4月に施行された改正労働契約法18条は、有期労働契約の濫用的利用を抑制し、労働者の雇用の安定を図ることを目的に、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えた場合、労働者の申込みにより無期労働契約に転換できるルールを定めている。
今回の特別法案は、有期労働契約の濫用的利用により、雇用の安定性が損なわれるおそれの少ない労働者について、上記通算5年の無期転換ルールに特例を設けることを主眼としている。
以下、本特別法案の概要を確認したい。
専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法案の概要
1.特例の対象者
①「5年を超える一定の期間内に完了することが予定されている業務」に就く高度専門的知識等を有する有期雇用労働者
企業内の期間限定プロジェクトに関する業務のうち、高度な専門的知識等を必要とするものなど一定の範囲の業務について、一定の国家資格を有する者や、一定期間の実務経験を有する年収1,075万以上の技術者、システムエンジニア、デザイナー等がこれにあたるとされている。
②定年後に有期契約で継続雇用される高齢者
定年後に同一の事業主又は当該事業主と一体となって高齢者の雇用機会を確保する特殊関係事業主に、引き続いて雇用される高齢者がこれにあたるとされている。
2.特例の効果
特例の対象者については、通算5年の無期転換ルールの期間を延長する。
1①の者 一定の期間内に完了することが予定されている業務に就く期間(上限10年)
1②の者 定年後引き続き雇用されている期間
3.特例制度の仕組み
事業主は、厚生労働大臣の策定する対象労働者に応じた適切な雇用管理に関する事項等についての基本方針に従い、雇用管理に関する計画を作成し、厚生労働大臣に申請し、認定を受ける必要がある。
この基本指針には、1①の者については、労働者が自ら能力の維持向上を図る機会の付与、1②の者については、高年齢者雇用安定法の趣旨を踏まえた高年齢者の配置、職務等に関する配慮等が例として挙げられている。
また、特例の運用にあたっては、契約締結・更新時に無期転換申込権発生までの期間や、1①の者については特例の対象となる業務など労働条件を明示することが求められている。
コメント
今回の改正は、グローバル企業やスタートアップ直後の企業の優秀な人材の確保や、事業主が定年後引き続き高年齢者を雇用する場合に5年を超えて働いてもらいたいと考えた場合に無期転換ルールの下では高齢者の雇用機会を奪うことにつながりかねないといった現状に対応したものである。
その一方で、改正労働契約法の施行から未だ1年も経過しないうちに特例を設けることに批判も出ている。
詳しくは、以下の厚生労働省該当ページを参照されたい。
労働政策審議会建議「有期労働契約の無期転換ルールの特例等について」の公表
「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法案要綱」の諮問と答申
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