育休明け男性社員の内勤配転は「著しい不利益」を負わせ無効 ー東京地裁
2026/02/19 労務法務, コンプライアンス, ハラスメント対応法務, 労働法全般, 住宅・不動産

はじめに
「育児休業から復帰後、外勤の営業職から内勤に配転されたのは不当だ」として、パナソニックリビングの男性社員が同社を訴えていた訴訟で18日、東京地裁が配転を無効とする判決を出しました。配転は著しい不利益とのことです。今回は育休に伴う不利益取り扱いについて見ていきます。
事案の概要
報道によると、パナソニックリビングに勤務する原告男性は2022年10月から2023年1月にかけて育児休暇を取得していたとされます。
しかし、職場復帰の際、入社時から担当してきた外勤営業職から内勤職に変更する配転命令を受け、月約5万円の外勤手当も支払われなくなったとのことです。
男性は育休取得後のこのような配転命令は不当であるとして、パナソニックリビングを相手取り配転の無効と慰謝料などを求め東京地裁に提訴していました。
育児休業制度とは
育休(育児休業)とは、仕事を休んで子供の育児に専念することができるとする制度をいいます。この育休は労働者であれば男女問わず取得することができます。育児・介護休業法によりますと、育休は原則として子供が1歳になる前日まで取得することが可能です。例外的に子供が保育園に入れないといった場合には最大2歳まで延長が可能とされています。
この育休は従業員から申請があった場合、就業規則に規定が無い場合でも拒むことはできません。また、男性の育児参加促進と女性の社会復帰支援を目的として「パパ休暇」「パパ・ママ育休プラス」という制度も用意されており、出産後8週間以内の期間内に男性が育休を取得した場合、特別な事情がなくても再度育休が取得できます。さらに、両親がともに育休を取得する場合、子供が1歳2か月に達するまで延長できます。
育休取得中は原則的に給与が支払われないため代わりに雇用保険から育児休業給付金の支給を受けることも可能です。給付額は育休開始6か月までは賃金の67%、6か月以降は50%となっています。
育休取得を理由とする不利益取り扱い
育児・介護休業法では、育児・介護休業の申し出をしたことや取得したことを理由として解雇その他の不利益な取り扱いをすることを禁止しています(10条、16条)。対象となるのは育休や介護休業だけでなく、子供の看護休暇、妊娠・出産等の申し出や小学校就学までの子供の養育措置なども含まれます。
不利益な取り扱いの具体的な内容としては、解雇することの他に有期雇用契約の更新拒絶、更新回数の引き下げ、正社員を非正規社員とする労働契約の変更、就業環境を害することや自宅待機を命じること、労働者の希望を超えて労働時間制限等を適用すること、降格させること、減給や賞与で不利益算定をすること、昇進・昇格の人事考課で不利益な評価を行うこと、不利益な配転をすること、派遣先が派遣労働者の労務提供を拒否することなどが挙げられています。
また、事業主は職場において上司や同僚が妊娠・出産休業、介護休業等を理由とする就業環境を害する行為を行わないよう防止措置を講じることも義務付けられています(25条、男女雇用機会均等法11条の3)。
不利益取り扱いに関する裁判例
不利益取り扱いの禁止に関する事例として、妊娠を機に軽易業務への転換を請求したことにより別部署に異動となり、降格され、育休後に前部署に復職しても後任者が既に存在したことから以前の役職に戻れなかったという例があります。
この事例で最高裁は男女雇用機会均等法の不利益取り扱いの禁止規定は同法の目的や基本理念を実現するための強行規定で、これに違反する取り扱いは違法であり無効であると示しました。
その上で、例外的に配転や降格などが許容される場合として、
(1)労働者が自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在する場合
(2)降格させずに軽易業務に転換することが円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって、降格措置が同法の趣旨・目的に実質的に反しないと認められる特段の事情が存在する場合
などを挙げています(最判平成26年10月23日)。
コメント
本件で東京地裁は、育休復帰時に配転を命じる場合は、業務上の必要性が、労働者の不利益を相当程度上回る必要があるとしました。
そのうえで、本件については「営業職として復帰させることで連絡や発注のミスが起きる具体的なおそれは認められず、配転の必要性は抽象的なもの」と指摘。外勤手当の不支給が著しい不利益として配転命令を無効と判断しています。
以上のように育休の取得は労働者の権利となっており、育休取得の申請を会社側が拒むことはできません。また、育休の申請や取得を理由とする不利益な取り扱いも禁止されており、例外が認められる場合もかなり限定的なものとなっています。
これらを踏まえたうえで、従業員が取得できる権利やその要件、また不利益に取り扱ってはならない旨を社内で周知し、育児休業などが取得しやすい職場環境の構築を進めていくことが重要といえるでしょう。
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