民法大改正!-日本経済に与える影響とは何か
2013/07/24   法改正対応, 民法・商法, 法改正, その他

事案の概要

 本年度3月11日に民法­ついて改正の中間試案が出され、この試案に対するパブリックコメント(意見公募)が6月17日に締め切られた。経団連をはじめ様々な業界団体から意見が一通り出揃ったとといえる。
 わが国の民法は120年前のはるか昔に制定され、現代の経済の実態とそぐわない部分が多くなっている。今回の改正では現代の経済の経済の実態とそぐわない部分についてこれを見直し、現代化していくことが検討されている。

 では、現代化のための重要な要素は何か。一言でいえば、情報格差、経済格差の是正である。

 情報格差の是正という面から注目が集まっているのは、相手方が合理的に予測することができない約款については無効とする約款規定の創設である(中間試案第30ー3)。約款とは大量の取引を画一的に処理する契約条項の総体で(中間試案第30-1)、例えばソフトウェアを購入した際にパッケージに印刷されている契約条項をイメージしていただけるとわかりやすいと思う。このような約款は内容的に専門姓が高く一般消費者のみならず、場合によっては企業の担当者であっても内容の理解が困難であり、約款を作成したものとその相手方との情報格差が大きい。このような情報格差によって、商品の購入者が不利益を蒙ることを防止するのが、今回の約款規定の創設の目的である。

 経済格差の是正という面から言えば、経営者以外の個人保証についてこれを無効とする規定の創設である(中間試案第17-6(1))。従来、金融機関は経営基盤の弱い中小企業に対して融資する際には、債権回収を確実にするために、経営者のみならずその家族にまで保証を求めてきた。その結果、融資した資金が返済できない場合には経営者の家族が一家離散となるケースが多々見られて来た。このような金融機関と経営者との経済格差是正が、個人保証の制限規定の創設の目的である。

 このような試案に対しては、経団連をはじめ各種団体から反対意見が出てきている。

 まず、約款については、これにより取引の迅速性が損なわれるのではという点から反対意見が出ている。民法の規定により逐一無効にしてしまえば、大量の契約を画一的に処理して迅速な取引を行うという約款の本来の目的が損なわれてしまう。また、加えて情報格差を是正するという観点からは、消費者契約法で十分ではないかとの意見もある(消費者契約法10条)。

 次に、個人保証の制限については、これにより金融機関が中小企業への融資を渋るのではないかという意見がある。それに加えて、経営者の知人で懐に余裕があるものの保証ができなくなるのではないかという懸念もある。

参考条文 消費者契約法10条
 第十条  民法 、商法 (明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項 に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

コメント

 民法は、私人間の取引を行う基本的な法律であり、企業の法務担当者の方が契約書を作成する際などにも使用されることも多く、経済の根幹を支えるルールである。そのため、民法の改正は経済の動きを大きく変えてしまう可能性もある。
 今回の改正でも、消費者や中小企業の経営者といった弱者保護を図りつつ、経済が停滞しなければならず、バランスが非常に難しい。改正は早ければ来年くらいには国会に提出される予定であるが、今後とも目が離せない。

関連サイト

法務省 民法改正中間試案
民法改正中間試案(pdf)

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