2年縛り-携帯電話解約金条項の有効性
2013/07/12 消費者取引関連法務, 民法・商法, 消費者契約法, その他

事案の概要
携帯電話を2年契約の割引プランを購入して途中でやめた場合に解約金を徴収されるという解約金条項の有効性を問題とする訴訟が頻発している。京都の消費者団体が解約金条項は無効であるとしてソフトバンクモバイルに対し同条項の差し止めを求めた訴訟では、大阪高裁は解約金条項は有効であるとして今月11日に消費者団体側の主張を退けた。同様の訴訟は他の携帯電話会社に対しても提起されているが、解約金条項は有効とされ、携帯電話会社側が勝つケースが多い。
そもそも、携帯電話の解約金条項とは何か。携帯電話会社は2年間継続して利用することを条件として、基本料金を半額とするなど基本料金を安く設定する契約を利用者と締結する。その代わりに利用者は契約期間の2年の間に他社に乗り換えるなどして中途で解約すれば、1万円弱の違約金を払わなければならない。これが、携帯電話の解約金条項の概要である。
民法では、違約金は自由に定めることができる(民法420条3項、同条1項)。しかし、消費者契約法は消費者保護のためにこれを修正している。同法9条1号では違約金条項を定めても、それが解約によって事業者に生じる「平均的損害」を超えた場合は無効であると定めている。解約金条項の訴訟は主に消費者契約法9条1号によって違約金条項が無効になるかが争点である。今回の訴訟では、違約金条項により定められた違約金は9975円であり、携帯電話会社に生じる「平均的損害」は4万円であると裁判所は判断したために、違約金条項は有効となった。
参照条文
民法第420条 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減することができない。
2 賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。
3 違約金は、賠償額の予定と推定する。
消費者契約法第9条 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
コメント
携帯電話の契約は各種割引、利用料金、機種代金が複雑に入り組んでいて、結局いくらかかるのか、どうすればお得かの判断が非常に難しい。そのため、契約内容を利用者が十分に理解できてないケースが目立つ。 解約金条項も基本料金の割引などで一応の利益を得ていても、なんとなく「損している」という意識が利用者の側に残ってしまう危険がある。
確かに、複雑な契約の内容を利用者に理解させるのは、携帯電話会社にとって負担ではあると思う。また、しかし、携帯電話会社側が契約の内容を十分説明し納得させなければ、利用者側は裏切られたと感じてしまい、
長期的な契約によって利益を得ることが困難となる。
MNP制度の導入で携帯電話会社間の利用者争奪戦が激化している今だからこそ、契約における慎重な姿勢が終局的な利益につながると思う。
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