モンゴル、外資規制緩和へ
2013/07/02 海外法務, 海外進出, 外国法, その他

事案の概要
モンゴルは、「外資規制法」を廃止させ、投資環境を改善させるべく、新大統領の下、新法の制定作業を本格化させている。
ここで、外資規制法とは、モンゴル政府が成長分野と指定する資源・金融・通信について外資出資比率が49%を超える場合、かかる出資に対して、政府の事前審査や国会の承認を義務付けるものである。
同法はもともと、オユントルゴイ鉱山開発に携わってきた開発会社(オーストラリアとカナダの資源開発会社の合弁会社)を、中国の国営企業が買収を取得しようとしていることが明らかになった際、モンゴル政府が急きょ導入した投資規正法である。
この法律は、中国の国営企業がオユントルゴイ鉱山開発に関わることを防止することを目的としていたといわれているが、結果として、日本企業がモンゴルの鉱物資源開発会社の株式の3分の1以上を取得しようとする場合には、事前にモンゴル政府の承認が必要となった。
同法制定より、日本企業によるモンゴルの鉱山開発は大きな影響を受けた。さらに、モンゴル政府承認の際の、審査プロセスの不透明さもあいまって、伊藤忠商事・三井物産のタバン・トルゴイ炭鉱の鉱山開発は停滞していた。
しかし、外国企業の投資意欲が減退し、対モンゴル投資が急減してしまった。2012年の直接投資は4割近く減少した。これを受けて、今回、モンゴル政府は同法を廃止することを決定、新たな投資法を制定し、投資環境の改善を目指す。
具体的には、外国企業からの投資も、国内企業からの投資と同等に扱う。また、契約段階で有効であった法律や規制を一定期間、変更しないことを確約する。政府や国会の審査制度は、撤回されることとなる見通しである。
コメント
この機会に、わが国の外資規制に目を転じてみることにする。わが国では、外国為替及び外国貿易法(以下、「外為法」と呼ぶ)と個別業法により、外資規制を行っている。
前者の外為法は、一部の業種について、特定の外国人が対内直接投資など(上場株式の10%以上の取得など)を行う場合に、事前届出や、審査を義務付ける規制が設けられている。
後者の個別業法では、特定の外国人ではなく、外国人全体を対象として、保有することのできる議決権の割合を制限する規制をかけている(外国人株式保有制限)。例えば、航空法では3分の1、放送法では20%以上の出資は認められないことになる。
いずれも、外国人等が、株式を取得すること自体を禁ずるものではない。しかし、外国人等が保有する議決権の合計が制限割合を超えると、その超過部分について、会社は、株主名簿の名義書換を拒否できることとされている。
その結果、会社は、当該超過部分を有する株主の権利行使を拒絶することができ、株主総会の議決権行使は当然に認められないこととなる。もっとも、当該株式の譲渡は可能であり、資産としての株式自体を失うことはない。
外資規制は、自国の企業を保護する観点からは非常に重要である。しかし、規制が行き過ぎると、かえって自国の経済発展を阻害することになる。それが、今回のモンゴルの新法の立法事実から明らかになっているといえる。
いずれにせよ、モンゴルの外資規制緩和は、日本企業にとって、歓迎すべき変革である。他国の外資規制動向にも、目を向け、ビジネスチャンスを逃さないことが肝要である。
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