議論百出 ヤフー全社で在宅勤務禁止
2013/03/04 労務法務, 労働法全般, IT

事案の概要
2月25日(月)、Yahoo!(以下「ヤフー」)アメリカ本社は、全社において在宅勤務を原則禁止とする通達を出した。この中には、ヤフーのオフィスに通勤出来ない社員は2013年6月までに通勤可能な場所へ転居する事、それをしない場合は解雇も有り得る事も内容として含まれている。
これに対し、主にインターネットを通して社内外から賛否の意見が多く戦わされた。それを受けて、26日(火)、ヤフーは、「本通達は業界全体としての意見ではなく、ヤフーにとってベストな手段を採用したもの」とする声明を発表した。
コメント
ヤフーによる今回の通達に対しては、時代を逆行するもの、社員それぞれの事情を無視するものとする批判が目立つ。これには、ヤフーが在宅勤務をはじめ多様な勤務形態の実現を牽引してきたインターネット関連企業である事、社内の自由という点では世界で最も有名な企業Googleの副社長を務めたマリッサ・メイヤー氏がヤフーの現CEOである事も影響していると思われる。
ヤフー自身の声明から本通達の意図を考えるに、実験的な思惑が多分に含まれているように感じられる。インターネットサービス会社としては屈指の知名度を誇りながら経営難に陥り、再建のためにCEOの交代を繰り返しているヤフーからすれば、今回の「時代への逆行」は、自社に対する荒療治である。社員の自社に対する忠誠を試しつつ、社内のコミュニケーション及び議論を活発にして閉塞した状況を打開する、そのような試験的手段であろう。
注意すべきは、これが荒療治として機能するのは、既に在宅勤務の普及が進んでいるアメリカの、特にインターネットサービス業界だから、という点である。
翻って日本を見るに、SOHOやテレワークといった在宅勤務の形態に関する用語は或る程度一般化してきてはいるものの、選択肢として浸透しているとは到底言いがたい。
その理由としては、制度についての周知不足が挙げられよう。在宅勤務には、勤務時間と生活時間の区分が困難であり使用者からの労務管理が十分に行いづらい、使用者や同僚との綿密な連絡が取りにくくトラブルに対処しづらいといった問題点があり、それに対処する事を目的として、厚生労働省がガイドラインを設定している。これによれば、トラブルを未然に防ぐための契約書への条件明示や、外回り営業マンと同じような労働基準法に定めるみなし労働時間制の適用が定められている。しかし、労使ともにこれらの事を十分に理解しているとは言えない。
在宅勤務は子育て・介護や傷病といった事情を抱えている人にとって有用であり、情報通信技術の発達に伴い、業種によっては出勤する場合より業務効率が上昇する事も有り得る。
様々な場合に対応した細かい法整備がなされ、労働者の自由と社会の効率化に資する勤務形態の多様化が進む事に期待したい。
関連法令等
労働基準法
第九条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
第三十八条の二(1)労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。
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