賃貸借契約終了後の賃料債権の取立ての可否
2012/09/05   不動産法務, 民法・商法, 住宅・不動産

概要

本件は、不動産(建物)賃貸人の有する賃料債権を、同人の債権者が強制執行のために差し押さえたところ、差押えの効力発生後に、賃貸人が当該不動産を賃借人に売却したことにより賃貸借契約が終了した場合において、その後に支払期の到来する賃料債権を取り立てることができるかが問題となっている事案である。

この点につき、控訴審は、不動産の所有権の移転(売却)前に差押命令が発せられていることから、被差押債権たる賃料債権は第三者(本件でいえば、賃貸人の債権者)の権利の目的となっており、差押えの効力発生後の賃料債権は消滅せず、そのため、当該債権者は賃借人からこれを取り立てることができると判断した。

これに対し、上告審(最高裁)は、控訴審の判断を否定し、次のように判示した。すなわち、賃料債権の差押えを受けた債務者は、当該賃料債権の処分を禁止されるが、その発生の基礎となる賃貸借契約が終了したときは、当該賃料債権は以後発生しないこととなるため、その終了が賃料債権の差押えの効力発生後であっても、賃貸人と賃借人との人的関係、当該建物を譲渡するに至った経緯及び態様その他の諸般の事情に照らして、賃借人において賃料債権が発生しないことを主張することが信義則上許されないなどの特段の事情がない限り、差押債権者は、第三債務者である賃借人から、当該譲渡後に支払期の到来する賃料債権を取り立てることができない。

コメント

最高裁は、賃料債権の差押え後、賃貸借契約の終了により、以後発生する賃料債権を取り立てることは原則としてできない旨判示している。一見すると、賃貸人による賃貸目的物の売却により、安易に強制執行の目的達成の妨害を許す結果となり、差押え債権者の保護に欠ける不当な判断をしたともいえる。かような結果を防止するためには、賃貸目的物たる不動産そのものをも差し押さえて、処分禁止の効力を発生させることが考えられるが、本件では、そのような措置がなされていないようだ。
最高裁は、特段の事情と唄って、例外的に取立てをすることが許される余地を残しているが、その具体的内容については判断せず、差戻し控訴審に委ねているところである。

リースを業務内容とする企業及びその債権者にとって、今後、「特段の事情」の認められる範囲がいかに解釈されるかが注目の的となろう。

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