「いいね!」ボタンクリックで解雇 「いいね!」は「言論」か?
2012/08/23 海外法務, 外国法, その他
概要
再選を目指していた米国の保安官が2009年、フェイスブック上で対抗候補に「いいね!(Like)」ボタンをクリックした職員6人を解雇した。
このような処分が言論の自由を保障した米憲法に照らして合法かどうかを問う上訴審が、米バージニア州ニューポート・ニューズ市で来月予定されている。
訴えを起こしたのは同郡の副保安官だったダニエル・レイ・カーター氏。
その上司のB・J・ロバーツ保安官は、2009年の選挙で自分の対立候補だった人物を支持したとして、カーター氏など6人を「職務能力が不十分」であることを理由に解雇した。
カーター氏の場合は、この対立候補への「いいね!」ボタンのクリックが具体的な解雇理由とされた。
米地裁は今年5月、「いいね!」ボタンをクリックすることは、合衆国憲法第1修正で保護される「言論」にはあたらないとして、解雇は違法ではないと判断した。
それに対し、米社会では批判の声が数多く挙がっている。
米国自由人権協会は、「いいね!」ボタンをクリックするのは「その対象を支持、承認、もしくは好んでいることを他者に表明するということであり、政治集会でプラカードを掲げるのと同じ」で、合衆国憲法が保障する自由な「言論」の一形式だと主張した。
また、フェイスブック社自体も議論に加わり、「いいね!」ボタンは「21世紀において、庭先に設置した政治運動の看板と同じ」で、対話や議論を起こすことを意図した機能だと述べた。
カーター氏は、この判決を不服として控訴。
言論の自由をめぐる米地裁の解釈は、現在の法律に沿っていないと主張している。
コメント
今回の事案において注目すべきは、米地裁が解雇を違法ではないと判断した理由が、公の立場にあるが故に同氏の言論が制限されるのはやむを得ないとしたのではなく、そもそも「いいね!」ボタンをクリックすることが憲法上保護される「言論」にあたらないと判断した点にある。
アメリカといえば高度情報化社会の先端を行く国であり、先のオバマ大統領の当選も、時代の先端を行くSNS戦略の賜物であったとの分析もある。
そんな中、人々が自己の政治的意見を表明する場合も、街角でプラカードを掲げるより、簡易なSNSを使うといった手段を選ぶことは、自然な時代の流れであろう。
このような時代、このような国においての本判決の判断は、世情との乖離があまりに大きいのではなかろうか。
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